二番ホームから電車が発車いたします(かわの)
白は真昼の光の果て、黒は真っ直ぐな光の淵、見える景色は全てが愛を背景に薄く、伸びる高層ビル群はもたげる首、藍色は真下の後ろめたさの陰、太陽は一秒間に二度瞬く、詩、視界、視界は麻痺、狭まる空からは雪のような砂、黄色は真実味のない誇りで霞む地面、散らばる傘はジェリービーンズ、落とすものはない、落ちるものはある、はためく襟には飛行機のピンバッチが、三角の鼻の向こうには六角鉛筆の頂上、笑う八重歯は尖り輝く、隣の彼は言うだろう、十五秒後に言うだろう、それにしても吉村のアンカーはないよなあ、こんなに元気なのだから歌を歌いたい、出会いをけなし別れをたたえるあの歌を歌いたい、聴いてくれた人達はきっと死んでしまえと言ってくれるだろうから。
作品名:二番ホームから電車が発車いたします(かわの) 作家名:早稲田文芸会