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早稲田文芸会
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二番ホームから電車が発車いたします(かわの)

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二年前、千曲は駅前にあるしゃぶしゃぶ食べ放題専門店で鍋を挟んでクラスメイトの女と向き合っていた。彼女は豚肉をせっせと入れては纏わりつく白菜や春菊を緻密な箸さばきで交わし肉とエノキだけを食べていた。
「結局」
クラスメイトの女は白米を噛みしめながら言う、もぐもぐと口を動かしながら言う、とても行儀が悪かったがそれを注意しようとはしなかった。したくはなかった。する必要もなかった。
「あなたはただの目立ちたがり屋なんでしょう? 小学生の頃クラスに一人はいたあの大声で下品なことを叫ぶような少年のようなものなんでしょう? 僕のクラスの千曲くんは変な子なんだよと家に帰って両親に言ってほしいんでしょう? その延長上にあることをしているんでしょう? そうしてくれなければあなたは自分を見つけられないんでしょう? ねえ、つまらない下らない頭の悪いどうしようもないろくでもない意味もない人間だと自分で思わない?」
鍋の中に肉を入れて湯になじませそろそろ頃合いかなと思い引き上げようとした瞬間女の箸が肉をつかまれそのまま持っていかれた。千曲が掴んでいたのは洗濯して縮んだハンカチぐらいの大きさの肉片だけだった。流石にそれは酷いんじゃないかと抗議しようと顔を向けると女は肉を頬張りながら笑って「安心するといいわ」と言った。
「わたしはあなたのことをブログにも書くし友達にも言うし小説のネタにもするわ、どう、よかったわね?」
 もう一枚豚肉を取ろうとすると皿には薄まった血のような液体しか見当たらなかった。おかわりの旨を伝えるため箸を置いて店員を呼んだ。