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とある少女が世界を嘲笑した日

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耳に開けられた、安っぽく光るピアスに艶の無い毛先の巻かれた茶髪、折られたスカートの短い裾、襟は第三釦まで開けられ、素肌が晒け出されていた。

強面の教師は怒りで顔を赤くした。


「おい、なんだその女子高生らしくない格好は!」

「別にいいじゃん。私の好きなようにしたってさぁ」


くるりと踵を返して歩きだそうとした少女に、教師はもう一度床を音高く叩いた。


「またんかいコラァ!」

「センセーちゃんとかるしうむとってる?短気は損気っていうでしょー?」


かるしうむ、とわざと舌足らずにゆっくりと発音し、からからと人を馬鹿にした笑みを浮かべる少女に、強面の教師の怒りは頂点に達した。


「お前、そんな格好して将来どうするんや!?いい加減にせんかいワレ!」


がっと少女の胸倉を掴み上げる。

少女の軽い身体は、一瞬浮き上がった後、爪先立ちになった。

だが、今まで人を馬鹿にしたような表情を浮かべていた少女の顔から表情らしきものは一切消え失せ、目は死んだ魚の様に光を失った。

強面の教師はやりすぎたか、と思い胸倉から手を離そうとした。

だが、少女の細い指先が教師の手首を蔓の様に掴む。

有無を言わせぬ強い力で教師の手首は締め上げられ、教師は僅かに怯んだ。


「センセー、さっきのセリフ覚えといてよ」


そう少女が言った時には、表情は確かに無かった。

だが、次の瞬間には悪戯っぽく微笑まれ、強面の教師は面を食らった。

胸倉を掴んでいた手は解放され、少女は軽やかに階段を駆け降りていった。


「自分が言ったこと、覚えといてよ。あたしが全てを明かす日までね」





「嫌だなぁ、私今日三者懇談会なんだけど」

「あー、私明後日だ」


そんな会話を耳にして少女は身を起こした。

身体が軋む様に痛んだが、それでも少女の心の中は或る意味、達成感に満ちていた。


嫌だ嫌だと繰り返すクラスメートの声。

少女は、にんまりと笑うと誰にでも無くこう言った。


「あら、あたしは楽しみよ」







その日の授業は短く、午前のみとなっていた。

短い授業の間、少女は一番前の席で堂々と睡眠を貪っていた。

強面の教師の目には当然良くは映らなかったが、先の事もあり起こす事は出来なかった。







三者懇談会が終わった後、担任の教師が思い出したように付け加えた。