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マルタ=オダ
マルタ=オダ
novelistID. 543
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始まりのアポカリプス

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 神の血って、ただのワインなんじゃないだろうかこれ。
「お出迎えの言葉は『お還りなさいませ、子羊様!』とかどうでしょう?」
「それは嬉しいのか?」
「『シスターさんとドキドキ密室懺悔サービス』などもご用意するつもりです。――有料ですが」
「懺悔に金を取るなよ!」
「いやですねぇ。あくまでお布施として、ですよ」
 渡されたメニューには全て値段がついていなかった。だがよく見ると下の隅っこに「シスターさんのサービスは、たゆまぬ神への(物質的な)ご奉仕によって受けられます※時価」。ぼったくりバーか。
 僕はまだ何か喋りまくっている冷泉を無視して、バーカウンターに頬杖をついた。それにしても傍目からすると、とても神父には見えない。
「…何か失礼なこと考えていませんか森瑚さん。あんまりツンな態度で居ると、サンドイッチのパンを石くれにしますよ。ご自分でパンを錬成して下さい」
「ああ分かった分かった、面倒くさいなもう。でもな?そもそもシスター喫茶なんて無理じゃないか、ここじゃ」
「何故ですか。もしかしてシスターさんがお嫌いですか?召されておきますか?」
 そう言って、ひどい笑顔でパンを切っていたナイフを構える。僕はそれを白い目で見つめてやると、冷泉はすごすごと今度は具のハムを切り始めた。みじん切りに。
「あのな。肝心のシスターがいないだろ、一人も」
この教会にシスターが居るところを見たことがない。シスターがいなきゃシスター喫茶は出来ないだろう、物理的に。冷泉は心底残念そうな顔で、
「そうなんですよねぇ。上の教会はひっっとりもシスターを派遣してくれませんし。弾圧でしょうか」
「そりゃ、こんな神に仕えるシスターを嫁宣言するような外道神父がいる教会には送らないだろうよ」
 清貧であるべき貞操が危うそうで。
「失礼ですね。私はシスターさんに手を出したりしませんよ?二次元は別ですけど」
「偶像崇拝は禁止なんじゃないのかよ」
 堅いこと言わないでくださいよ、と冷泉はサンドイッチを盛り付けた皿とスープを並べる。
 これで諦めて普通の喫茶をやってくれれば良いんだけど。シスターが出迎えるような怪しげな施設に、僕はあんま出入りしたくない。
「でも実は、その点については心配しなくてもいいんですよ」
「……どうしてだよ」
 シスターさんは私の心の中にいますよ、とか言うんじゃないだろうな。