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マルタ=オダ
マルタ=オダ
novelistID. 543
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始まりのアポカリプス

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 受け取って見てみると、ネコ耳(いつも思うけど耳が4個になるんだよな)を着けてメイド服を身に纏った女の子のピンナップがでかでかと表紙を飾っている。文句は、
「『いらっしゃいませ、ご主人様!』…ねぇ。そんなに良いモンなのかな」
 すごい歯が浮く感じで気まずいと思うのだけれど。
「うちも時代の流れに取り残されないようにしなければね、いけないと思いまして」
 冷泉は言いながら取り置きのコーヒーを注ぐ。シスエル教会オリジナルブレンド「裏切りの苦み」。
 僕はコーヒーを含みつつ、「というかそもそも、教会がそんなあからさまに商売やって良いのか?」
 前から喫茶店だったわけだから、今更っちゃあ今更だが。
「商売だなんて人聞きの悪い。教会は謂わば神の家、迷える子羊を神の慈悲で誠心誠意ご奉仕するのに何の不思議もありません」
 冷泉は平気な顔でいい加減な詭弁を弄す。
 相変わらずだ。この神父はそのくせやたら商魂逞しく、一時期は免罪符を売り物にしようとしたことさえあった。蓄財は神の思し召しとか、平気で宣う似非神父。
「まあどうでもいいけどさ。というか何でシスターなんだよ、メイドじゃなかったのか?」
 こいつのことだから、どうせアレだろうと当たりはつく。それでも振ってやるのが人情、それ以上は知らない。
「おや森瑚さん。もしやメイドさんがお好きなのですか?」ちゃうわ。「でも残念、ここは教会ですからね。教会ときたらシスター、シスターと言えば教会!故にシスター喫茶です。ハイル・シスター!!」
 大仰な手振りを添えて、冷泉はジャーマンで締めた。
 この通り神父でありながらシスター属性マニア、それがこの人格破綻者である。聖シスエル教会の名も別にシスエルという銘の天使とか聖人が由来ではなく、単純に「シスターLOVE」の略だ。
「いやあ、やっぱりシスターは至高ですよね。シスターは神の娘で、神父は神の息子。即ち、シスターは神父のシスター!ナイスダブルミーニング!!」
「あーあー、そいつは良かったな。分かんないから早くメシ作れ」
「そうそう、実はメニューももう作ってあるんですよ」
 冷泉は僕の言を無視して、これまたシスターの絵で飾られたメニューを渡してきた。仕方なく開いてみる。
「『ゴルゴダの丘のオムライス〜十字架を添えて〜』『神の血』…なんだこれ、怖いんだけど」