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遠くて近い、狭くて広い家

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だが目の前に居る女の子はどう考えても紗英と近い、いや同じ血が流れているとしか思えない。
「君は・・・・・・」
マジマジと覗き込むべきか、非現実的な理解できないモノとして否定すべきか身体も心も迷って、靖孝は棒立ちになった。
「あの子は十年前の私だよ」
あっさりと紗英は非現実的な現象を肯定した。
「幻、幽霊?」
「幽霊だっららこんな風に触れないでしょ?」
制服姿の女の子が靖孝の手を握る。
「この家の幻かも」
「ほら」
戸口から女の子が飛び出ると、家の外で景色に溶け込むように十五歳の紗英は消えた。
「ね、信じた?」
「紗英姉この子は?」
同じ質問をした。
「そうなの買い物には行って貰えないのよ」
そういう問題ではないと突っ込むのを忘れて靖孝は春の日差しを見つめた。幽霊が出るには優しすぎる日差し、これが久しぶりに帰ってきたこの国の春なのだ。

■ 二

靖孝の隣に座る女子高生は、確かに十年前の紗英、高校生の妹島紗英だった。
日の当たる縁側に座りながら、 横に座る少女を見る。靖孝の心に焼き付いた姿そのままに大人になった靖孝の前に現れた。
「なんか変だね」
「何が」
「私が顔を上げないとヤス君の顔見えないんだもの」
靖孝は自分の抱いていた違和感の正体が身長差である事を知る。
「大きくなったね」
「ああ、うん、高校入った位から」
「ふーん背は抜かれちゃったんだね」
十五歳の紗英は後ろの居間でお茶を飲む居間の二十五歳の紗英に声を掛けた。
「そうよ、男の子は大きくなるときはあっという間」
「けどその時には貴方はこの家に居なかったんでしょ?」
「そう、最初に海外から帰ってきて一番最初に驚いたのはヤス君の背」
「二番目は?」
「電車賃が高くなってた事かな?」
どれくらいの驚きなのか計りかねるランキングを聞きながら、高校を中退して最初にこの家に帰ってきた紗英姉の事を思い出す。
ボロボロのリュック一つと履き潰したジーンズとサマーセーター、とても長い旅をしていた人とは思えない格好。
何時も軽い格好が好きで、着飾る事をしない。
何時でも近所に直ぐ出掛ける格好。そしてそのまままた海外の何処かへ出掛けてしまう。
「ねえ、ヤス君も海外に行ってたんだって?」
「ああ今はちょっとした短期留学」
「なにを勉強しているの?」
「建築の勉強」