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遠くて近い、狭くて広い家

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あっ声をあげた時にはもう十五歳の紗英のフライにモルトビネガーを掛けていた。
「食べてみて」
酢の匂いに顔を一瞬怯ませながら、十五歳の紗英は恐る恐る口を付ける。
一口、二口、揚げたジャガイモと併せながら一つ平らげた。
「どう?」
「うーんやっぱりソースか醤油が良いなあ」
「やっぱり」
「じゃあ何で食べさせるのよ」
「勿体ないじゃない?」
少し大きめの英語のラベルの瓶を振りながら紗英は微笑む。
「結局、調味料の類が引っ越しの時に残ってね、なんだか荷物も少なかったし持って帰って来ちゃった」
なんて事のない会話だが、違う国の味を体験する前の紗英と、体験した後の紗英。
「それにしても子供っぽい夕食だよね、ヤス君が居るから?」
「言われて見ればそうね・・・・・・」
油モノが盛られた大皿を中心に三人で囲んでいた。
「何時までたってもヤス君を子供扱いなんだから」
「そんなこと無いわよ」
「じゃあどう接してるの?」
紗英の質問に靖孝が反応した。
「どうって?」
「えっそれはやっぱり恋人としてとか、そういうんじゃないの?」
今の紗英はそう言えば考えたことが無かったと言う感じで考え込み始めた。
「ちょっと、なんにも考えてないで家を空けていた間ヤス君に掃除とか押しつけてたの?」
紗英にとっては自然な事だった。
家を空けるとき、誰かに貸したりあるいは処分なんて考えもせずに偶々居た靖孝にカギを預けた。そこには不安も何も感じなかった。
「ちょっとヤス君そんなんで良いの?」
「その話は今いいよ」
「大事な話じゃない?」
すっと席を立って紗英は台所に消えた。
靖孝はちょっと居心地の悪そうに足を組み直した。
「ちょっとヤス君、なにやってんのよ・・・・・・」
「なにって?」
「全然進展して無いじゃない」
「進展ってそんな」
「何時までも私を見てるだけでどうするのよ、召使いじゃないんだから家の掃除とか買い物だけしていてもしょうがないでしょ? 本当に何もしてないの?」
「紗英姉ってそんなズバズバと聞きにくい事を聞く人だっけ?」
「他人のそう言う色恋沙汰には興味ないけど自分の事だからね、気になるのよ」
「本当に何も無いの?」
「手紙とか電話とか、こうやって一緒にご飯食べたりしてるよ」
冷たい目でじっと靖孝の方を見る。