KNIGHTS~短編集~
いなくならないで、野口君
何日経ったのだろう。
忌引で休める期間が終わって今週は学校にも行ったから、2週間は過ぎたか。
あれ? 今日は学校に行かないといけない日だっけ?
時間の流れが全く分からない。
確か昨日は朝になるとカイが来て、促されるように学校に行った。教室では飯島君と一緒だった気がするけど、どんな話をしたとかは覚えていない。
全てが、どうでも良かった。
お母さんの最期はあまりに呆気なかった。安定した生活が欲しいと言って、高校の野球部の監督になったお父さんと離婚して、友達の会社で働き出したお母さん。わりと収入も安定して、望んだ生活を手に入れたと思ったら、酔っ払いの運転する車に命を奪われた。
お父さんの欠けた生活に慣れてきたら、お母さんまで欠けてしまった。
当たり前だと思っていた存在を、次から次へと、失っていく。
お父さんはまだ生きているから、一緒に生活することも出来る。だけど春に大きな病気をしてまだ体が良くなっていないから、この先どうなるか分からない。
いつか、カイさえも失う時が来るのだろうか。一緒に居られなくなった時、自分はどうなるのだろう。
カイに会いたい。
今すぐに。
だるい身体を無理矢理起こして立ち上がろうとしたけれど、すぐにふらついて座り込んでしまった。身体が軋んでいるように痛い。頭も胸も背中も。
もう一度立たなければと思っても、痛くて動けない。
「…ナツ…」
顔上げれば、会いたくて仕方のなかった人物がいた。
近くに行こうと立ち上がるけれど、痛みは主張を続けていて、視界がぐらついた。
あぁ、このままだとテーブルにぶつかるな。
頭は何故か冷静にそんなことを考えいた。しかし、私の身体は無事に支えられていた。
「……カ……イ…」
ゆっくりと床に座らされる。
カイはなんだか慌てているようだったけれど、そんなのはどうでも良かった。
手を伸ばして、カイのシャツを掴む。
あぁ、カイがここにいる。
まだ私の隣に。
お願い。カイはいなくならないで。
ずっとずっと、一緒にいて。
作品名:KNIGHTS~短編集~ 作家名:SARA