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食べたいもの

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 となると、俺の考えは一つの結論に達する。
 俺は早々に着替えをすませ、公園に向かった。

「やっぱり」
 公園に着いて柚の姿を確認し、その近くに居た少年の姿を見つけると俺は確信した。
「え、聡さん?」
 俺を見つけて驚く柚。そして近くにいた橙色の頭髪の少年はおう、と言いつつ俺に手を振った。
「久しぶりだな、元享受者」
 そいつ――精霊は軽い口調で俺に近づく。
「そうだな、ってかやっぱり柚が今の享受者かよ」
 はあ、とため息をつく。およそ四年ぶりの再会だった。
「ははは、僕もまさかお前の知り合いが次だとは思わなかった」
 満面の笑みを浮かべる。
「聡さん、この子とお知り合いですか?」
「知り合いも何も、『ちから』を貰ったのもこいつからだし」
「あの時は笑ったなぁ。『上手い飯が食いたい』を三回なんて願いは初めてで慌てた慌てた」
 ははは、と俺たちは笑いあう。
「……そうじゃなくて!」
 なごやかムードになりかけた雰囲気を無理矢理断ち切る。
「柚は、柚はいったい何を願ったんだ」
 柚の表情が固まった。精霊が笑うのを止め、柚の表情を伺った後、こちらを向いた。
「ん、『聡さんの部屋を綺麗にして欲しい』という願いだな」
 予想はしていたが、まさか、と思った。
 ささやかでもたった三回しかない、叶えて貰える願い。
「柚、なんでそんなことに使ったんだ?」
「……恩返し、したかったから」
 とても単純な答え。純粋であり、彼女の社会的身分から考えると、とても馬鹿げた願い。
「俺はそんなことに願いを使って欲しくない」
 きっぱりと言った。
「俺に恩を返すよりも自分のために願いを使ったほうが、俺にとっては一番の恩返しだ」
 自分の本心を。
「でも――でも柚は、聡さんに恩返ししたかった、したいんです!」
 その柚の声は、今までの中で一番大きい声だった。
「精霊さん、決まりました、二つ目の願いは――」
「待て待て待てッ!」
 俺はすぐさま柚の口を塞ぐ。むぐぐぐぐと暴れる柚だったが、俺は必死に押さえつけながら精霊に質問する。
「この願い、俺が願ったら駄目か?」
 大まかなルールは俺も知っている。他人が願うことは出来ないということも分かる。
 だが、もしルールの隙があれば、と聞いてみる。
「無理だ。願いが享受者本人の想いと言葉が重なった時点で願いとして受理される」
作品名:食べたいもの 作家名:犬ガオ