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ほのむら伊流
ほのむら伊流
novelistID. 498
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竹草少女

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「ちょっと委員長っ!?」
「あぁああもう…」
 遠くで自分を呼ぶ声が聞こえる。
「いまいくから待って!」
流生(ルイ)は仕方なく持っていた用具やらリストやらが入っているプラ質のケースを置いて、声のした方に駆ける。その足取りが、やっぱり重い。
 彼女は自分が汗っかきな事を知っているので、あまり髪を伸ばしたいとは思わない。
 とはいえ自分は女の子なのだから、やはり髪は伸ばさなくてはならない。
(もう切っちゃおっかな)
 ぼんやり額にかかる髪を見て思う。
 そろそろ房がいくつか肩口に差し掛かっている。毛先が遊んでうなじがさらさらする。涼しい五月連休や秋なら、そんなさらさらも歓迎だ。でも今はもう夏のはじめ。うだるような暑さが今年も、まさにこれからこの学校を襲うに違いない。
 そうなると夏に備えて髪を切りたいという事になるのだが、それはそれで彼女にとっては気が重い。
(切ったらみんなうるさいからなぁ…)
 前髪数センチを切っても気付く人たちばかりだ。
 以前に少し跳ねた髪が気になって、いちいち直すのも面倒なのでそこを切ったら、友達のほとんど全員が気付いて大騒ぎになった。
 むしろそのことにびっくりしてしまって、それ以降自分の髪に神経質になってしまったくらいだ。
「お待たせ」
「待ってたよぉ」
 顔や声は朗らかに笑ってはいるが、内側ではやや疲れているのが目に取れる。
 どうしても行事の計画準備や作業となると、どういうわけか思い通りに進まないシチュエーションに苛々が溜まってくる。こんな簡単なことなのにどうして上手くいかないんだろう。何故言葉ひとつ伝えるのにここまで時間がかかるのだろう。自分のイメージをそのまんま相手に伝えられたら、どんなにか楽なのに。そんな気持ちでいっぱいいっぱいになってしまうのだ。
「ねえリストの用具が足りないのよ、去年そのまましまっておいたはずのものがどうして無くなるわけ?意味わかんないんですけど!」
「あははは…」
(それは私に言われても…)
 副委員長である彼女もまた疲れているのだろう。すこし声が高くヒステリー気味だ。
 陽射しが少しきついのもある。青い空の下で高く上がった日が照らす陽光よりも、夕方の手前、やや斜めから赤く照らされる方が肌に痛いのだ。
「どれが足りないの?」
「カラーコーンがひとつと迎賓用のパイプ椅子が三つ!」
作品名:竹草少女 作家名:ほのむら伊流