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自己嫌悪

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   自己嫌悪

 自分を嫌い憎むこと。確かこんなような意味だったと思う。まさに私そのもの。何か切っ掛けがあると自己嫌悪に陥る。この前もそう。友人が「面白いから読んでみたら。」と言って恋愛小説を貸してくれた。確かに面白かった。ラストでは涙が流れる程だった。しかし次の瞬間、自分は何をしているのだろうという思いに襲われる。この小説の登場人物達は皆本気で恋愛をしているのに、私には好きな男(ひと)すらいない。私の自己嫌悪はこうして始まる。いろいろな思いが頭の中を何周も駆け巡り、気が付いた時には二時間も三時間も経っている。でも、そこで私の自己嫌悪が終わる訳ではない。しばらくの間は俯き加減でため息ばかりついている。こんなことは私にとって日常茶飯事だった。ある時は他人の会話を聞いて、またある時はテレビドラマを観てと、本当に下らないことで自己嫌悪に陥っていた。最近、その症状がより酷くなった。そんな私を見て友人が催眠治療をしてくれる精神科医を紹介してくれた。
 そこは病院とは思えないぐらいお洒落でとても落ち着いた感じの場所だった。精神科というところに対して少し怖いイメージを持っていたけれど、そんなことは少しも感じなかった。それから、完全予約制のおかげで他の患者と会うことがないということも好印象だった。その場所で私は少し待たされた。一人の時間を持つことで、緊張をほぐすことが目的らしい。しかし、一人になったことでだんだん不安になってきてしまった。確かに落ち着ける雰囲気がここにはある。ハーブティも出してもらった。いろいろな本や雑誌もある。環境音楽のようなものも流れている。それなのに…。そんな私の様子を見ていたのか、慌てて看護婦さんが出てきた。
「どうぞ、中へお入り下さい。」
 と言ってカウンセリングルームに案内してくれた。中には比較的若い男の先生が待っていた。
「すいません。お待たせしました。」
 先生の口調はとても優しい感じだった。でも、私の中で何かが引っ掛かっていた。
「待ち合い室でのあなたの様子、見させてもらいました。すみません、今のあなたの状態を見ておきたかったのです。いろいろ治療方針を決めるために。少し不安にさせてしまいましたね。あなたの状態は何となく分かりました。もっと詳しく知るために、聞かせてもらえますか。あなたがここに来た理由を。」
作品名:自己嫌悪 作家名:もとはし