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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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 バズーカ砲は大蛇に当たって爆発を起こしたが、大蛇の硬い鱗についたのは黒い煤だけだった。
 ジャドは冷静さを失わずに、さらなる隠し武器を出した。
「喰らえ、ネット通販で買った手裏剣セット!」
 六方手裏剣、八方手裏剣、棒手裏剣と予約特典の忍者ストラップ!
 卓越した業で投げられた手裏剣は大蛇の皮膚を貫いた――ストラップ以外はね!
 だが、その程度の傷など大蛇にとってかすり傷。
 ジャドは鎖の付いた巨大な鉄球を出した。
「ネット通販で在庫希少の魔人の鉄球!」
 ジャドは自分の体よりも大きなトゲトゲ鉄球を振り回して、大蛇の巨体にヒットさせた。
 鉄球を喰らった大蛇がバランスを崩した。
 思わずユーリは感嘆を漏らす。
「武器が通販なのは怪しいけど……強い」
 そう、ジャドは自分から売り込むだけあって強かった。
 怒り狂う大蛇の攻撃をジャドはかわしながら、互角――いや、ジャドのほうが押しているくらいだ。
 命を賭ける戦いは他人に任せて、ユーリはこっそりリンゴを採りに行こうとしていた。
 だが、突然どこからか鳴り響くアラーム音!
 まさかリンゴを守る警報アラームなのかっ……と思いきや、アラームはジャドから聴こえていた。
 ジャドはピタッと戦うのやめた。
「お試し版なので三分間しか活動できない。では、検討を祈る!」
 あっ……消えた。
 紙ふぶきに包まれながらジャドは姿を消してしまった。
 思わずユーリが叫ぶ。
「お前はどっかのヒーローかっ!」
 中途半端にジャドが攻撃をしたため、大蛇はそーとープッツンしていた。
 ジャドの登場は状況を悪化させただけだった。
 ありえねーっ!
 ……さてと、気を取り直してユーリは逃げる準備をしていた。
「お父様が厳しくてウチの門限六時なんです、帰らなきゃ♪(ウソだけどね!)」
 ウソかよっ!
 何食わぬ顔をしてユーリは逃げようとしたが、すでに逃げ場は失われていた。
 長い大蛇の体がぐるりと柵のようにユーリたちを囲んでいたのだ。
「覚悟しろ、この地を荒らす罪人よ!」
 大きく開いた大蛇の口からよだれが零れ落ちた。
 そのよだれをバシャンと頭から浴びて、現実世界に呼び戻されたルーファス。
「ここは…… うわっ大蛇」
 ルーファスは現実を放棄して気を失った。
 使えねぇーっ!
 最初からルーファス本人(・・)になんかユーリは期待してない。
 ユーリは一か八かの賭けに出た。
「秘儀〈他力本願〉発動!」
 その叫び声に合わせて気絶していたハズのルーファスが立ち上がった
 まさかルーファスったら、お茶目に死んだフリだったのか?
 いや、違うようだ。
 ルーファスは口から泡を吐いて、首をガクンとさせている。マジ気絶だった。
 ユーリの指先が糸で吊るされた人形を操るように動く。すると、それに合わせて盆踊りをするルーファス。
「よし、この技は使えるみたいね」
 満足そうにユーリは笑った。
 そう、気絶しているルーファスを操っているのはユーリなのだ。
 秘儀〈他力本願〉とは、勝手に誰かの身体を操ってしまう他力本願な技なのだ。しかも、自分の意思で動いていないので、潜在的な能力を発揮できてしまう特典付き。
 ルーファスに構えさせ、ユーリが叫ぶ。
「マギ・サンダー!」
 天から召喚された稲妻が大蛇に落ちた。
 痙攣した大蛇が地震を起こす。
 揺れで思わず地面に手をついてしまったユーリに大蛇が襲い掛かる。
 ユーリはすぐにルーファスを操る。
「ゆけっ、ルーファスミサイル!」
 宙を浮いてぶっ飛んだルーファスの頭突き!
 アゴにアッパーカットを喰らった大蛇が倒れて後頭部を強打した。
 ついでにルーファスのグルグル眼鏡も粉砕。
 泡を吐いて気を失った大蛇。
 素顔を露にしたルーファス。
 そして、目を輝かせたユーリの胸がトキメク!
「イケメン!」
 な、なんと……というか、お約束的にルーファスの素顔はちょーイケメンだったのだ。
 でも、やっぱりここはルーファスクオリティー。
「……やっぱりイケてないかも」
 白目を剥いたルーファスは口から泡を吐いていた。キモメン!
 幻滅して気を取り直したユーリは最後の止めを刺そうとした。
 ルーファスの周りに魔力の象徴マナフレアが発生する。蛍火のようなマナフレアが次々と浮かび上がる。
 思わずユーリは歯を食いしばった。
「凄いマナ……(ただのへっぽこ魔導士だと思ってたけど、なんて恐ろしい潜在能力なの……こんなことありえない!)」
 凄まじく膨れ上がるルーファスの力をユーリは制御しきれなかった。
「(このマナの感じは……まさか……あの人)」
 気を失っていたハズの大蛇がゆっくりと身体を起こした。
 ユーリは魔法を放とうとしたのだが――。
「我の負けだ」
 大蛇が負けを認めたのだ。
 でも、ちょっぴり遅かった。
 ニッコリ笑顔のユーリちゃん。
「ごめん、力が抑えきれない♪」
 次の瞬間、巨大な爆発を起きて辺りは砂煙に隠された。
 ご愁傷様ですね!
 ドクロマークの煙が遠くからも観測できるほどだった。
 しばらくして、だいぶ煙が治まってくると、どこからか小さく咳き込む音が聞こえて来た。
「ゲホゲホッ……マジ死んだかと思った(あれ、でもどうしてアタシ無傷なの?)」
 驚いた顔をするユーリは気づいた。自分を守ってくれたのは大蛇だったのだ。
 大蛇は自分の舌に乗ったユーリを地面に下ろした。そう、ユーリを口の中に入れて爆発から守ったのだ。
 ユーリは瞳を輝かせて大蛇を見つめた。
「ありがとうございます……でも、ベトベトになった服のクリーニング代はあとで請求させていただきますから♪」
 大蛇は呆れた顔をしている。
「誰が助けてやったと……まあよい、金は持ち合わせておらぬが、お前たちの強きマナに敬意を表して道を開けよう」
「やった、これで?ロロアの林檎?が手に入るわ!」
 ユーリは飛び跳ねて喜びを表した。
 しかし!
 ここで大蛇の爆弾発言――。
「この先には?ロロアの林檎?などないぞ」
「はっ?」
 許容範囲を通り越した驚きにユーリは頭が真っ白になった。まるで『夢オチでした!』くらいの呆気の取られ方だ。
 スイッチの入ったユーリは激怒した。
「んだとぉ! ふざけんなよ、どんだけアタシが苦労したと思ってんだよ!」
「そう男みたいに怒るな魔族の娘よ」
「男とか言うなよ!」
「怒りを静めてよく聞け、この先にあるのは?ロロアの林檎?ではなく?智慧の林檎?じゃ。?ロロアの林檎?なら……ほら、あっちの売店で売っておるぞ」
「はっ?」
 一気にユーリの怒りが冷めた。
 大蛇が顔を向けた先には、観光地によくありそうな?おみやげ屋さん?があった。定番のバッタもんTシャツや木刀まで売っている。
「ありえねーっ!」
 ユーリの叫び声が不毛の大地に木霊した。
 そのころルーファスは――地面に埋もれてかくれんぼをしていた。
「暗いよぉ、狭いよぉ、怖いよぉ、誰か助けてよぉ」
 頑張れルーファス!
 負けるなルーファス!
 僕らは君の不幸を見てあざ笑う!

 第1話おしまい