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テッカバ

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 ……なるほど。この極限的に“運だけは良い”唄方くんを前にすれば、いくら超難問でもマークシート式である以上全問正解だ。唄方くんは勘で適当にシートを塗りつぶしていくだけで良い。それは偶然にも全て正解の番号になるんだから。
 くそぅ、納得行かない。私は受験の為に一年間まるごと勉強漬けだったんだぞ! 週末だって予備校行ってたし、放課後は人数足りないからって引退したのに部活やらされてたんだぞ! それを彼は何の努力もせず、運だけでさらりと乗りきってしまったのだ。
 ――ああ、世の中って不公平。
 気が付くと、唄方くんの強運を自然法則の一つみたいに捉えている私が居た。
 普通なら彼が言っているのは全部嘘で、裏で何か糸を引いているに違いないと考えるだろう。でも唄方くんの場合は別格だ。彼の運は最早、人間の手でコントロール出来る範囲を超越している。偶然で済ませるしか解釈のしようが無いのだ。
「どうしたんですか? 黒御簾さん、眉間にしわ寄せて」
「大丈夫。ちょっと知り合いの恐ろしく運が良い人を殺す方法について考えてただけだから」
 精一杯の皮肉を込めて言ったのだけれど、相手の方が一枚上手だった。
「そうですか。屋上から突き落とすのなんて簡単で良さそうですけど?」
「それじゃ、偶然にも下にトラックが急停車して、助かるかもしれないわ」
「はっはっは。そんな偶然あるわけ無いでしょう」
 よく言うわよ! まったく。
 もう唄方くんと皮肉で張り合うのはやめにしよう。って言うか、もしも皮肉で彼に勝ってしまったら、私は唄方くんよりも嫌味な人間ということになってしまう。それは、口喧嘩で勝っても、人として負けな気がする。
「ところで黒御簾さん。勤勉な大学生の自分が掴んだ情報では、午後の講義は二つとも休講らしいですよ」
 初耳だ。私が3号館校舎を出た時には、そんな知らせは掲示板に無かった。
「どうやら、担当の講師が二人とも急に盲腸を発症したようです。偶然にも」
 偶然って怖いですねー。と軽やかに笑う唄方くん。
 ぞわり。背筋が寒くなった。
 そんな偶然あり得るか……? あり得るとしたら、百パーセント間違いなく目の前で笑う寝癖頭の青年が関係している。
 ――つまり午後の講義が潰れると、唄方くんにとって幸運な何かがあるのだ。
 笑い方を、ニヤリとしたあの表情に切り替えた唄方くんが言う。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎