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テッカバ

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血祭オンステージ 2


「ギャンブラー!?」
「そう、しかも数札持ちだよ」
 誇らしげに胸を張る奈々子ちゃん。小柄ながらその膨らみは私より大きいことに気付いて、少し落ち込む。
 信じられない。私と同じ大学生が、ギャンブラーだなんて……。しかし、言われてみれば唄方くんだって私より一歳年上なだけだ。案外ギャンブラーって若い人が多いのかな?
 それよりも気になったのは彼女の言っていた“科学色の小悪魔”……。
「ねえ、唄方くん。ギャンブラーってそれぞれ通り名があるの?」
「ありませんよ。祐善さんが自分で名乗ってるだけです」
 ……まあ良いか。本人が楽しければ。
 再び席についてカレーを頬張る奈々子ちゃん。よくよく見ればその仕草は、元気に給食を食べる小学生のような微笑ましさがあり、当初の肉食獣的な印象は中和されていった。
 謎の女の子に関する詳細が分かった所で、次に私の中に沸きあがった疑問は唄方くんについてだ。
「そう言えば、どうして唄方くんがここに居るの?」
 曲がりなりにも彼は鉄火場のギャンブラー。奈々子ちゃんは現役の大学生だから良いとして、真昼間から仕事もせずにこの人は何をしてるんだ? まさか、またここで人死にでもあったんじゃ……。
 その答えはあまりにシンプル過ぎて、下らなかった。
「ああ、今日から自分、この大学に編入して来ました」
 ……嘘つけ。
「あ! その目は信用していない目ですね」
 そう言いながら全身のポケットを探り、唄方くんは財布を取り出すと中からカードを一枚引きぬいて私に見せた。確かに目の前にあるのはうちの大学の学生証だ。
 お世辞にも頭が良いようには見えない彼がうちの大学の編入試験に受かるなんて、きっと何かの間違いだろう。
 前にも書いた通り、東都大学は全国規模でもそこそこ名の知れた私立大学だ。入学試験はもちろんセンターとは別の独自問題があるし、編入ともなれば結構な学力を要するはず……。て言うか、そもそも編入試験なんて受け付けてたっけ?
 しかし、この疑問の答えも例に漏れず下らなかった。
「自分これでも国家権力振りかざせる身分ですから、上層部に頼んで圧力かけて、大学側に無理やり編入試験やらせました」
「試験は?」
「幸運なことに、全部マークシート式でした」
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎