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近頃おもうこと

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その13


あれから十年の月日が経って、今やっと落ち着いた日常を暮らしている。
友達はみな私のことを、今が一番幸せなんじゃないの、という。
長年の奔走で身体が一段老化しているのを感じるが、これといった病名のつく病気はない。
娘たちはそれぞれが自分の道を力強く歩いているので、強いていえば孫の情報を知るのが楽しみだ。


近所に居た老女とは長年、一方的に親しく思って色々話しをしたものだが、先方の気持ちや行動は何か腑に落ちない気がしていて、何が彼女をそうさせるのか未だに答えは見つからないが、県外の娘宅からたまに電話をくれると楽しい会話で弾む。

外出するとき門扉を開けると、在りし日の彼女が門の前に立っていて言葉を交わしていたのを思い出す。未だにもやもやを感じながらも、いずれ声が聴けなくなる日もあることを思うと、人間の寿命の限度を思い何もかもが自然消滅していく過去なのだろうと思う。
にこやかな笑顔の心に潜む人間であるが故の嫉妬心。人には心底に魔が宿っているのを感じるこのごろだ。

心穏やかな今のこの状況が続いて、年を越し新しい年を迎えても同じような日々でありますよう願っている自分がいる。


 完








 

作品名:近頃おもうこと 作家名:笹峰霧子