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『リング』の貞子ウイルスと間違えてでもいるんじゃないのか



久しぶりの投稿だが帝銀事件に関してはここで続けるつもりはない。だからあれは本にして出す考えと書いたろう。話は出来ててさらに細かく書き直してあるのだけれどおれを盗んでいるやつらにもうあの先は盗ませんのだ。
 
「最後までここにちゃんと出す」と書いた憶えは一度もないぞ。《自分が書いたことにできる》と思った者には悪いがタダ見せはあれで終わり。続きはおれの名前で本になったものを読んでください。
 
――で、帝銀はそうなのだが、コロナについても順序立てて書き直しておこうと思う。これは最後まで出してやるけど、おれにとっての始まりは2020年3月だった。
 
その初めの2日か3日くらいかな。図書館に行くと閉鎖で中に入れないとなっていて、「え? なんで?」と言うことになる。コロナの話は聞いてはいたが無関心で、「要するにちょっとタチの悪い風邪だろ」くらいにしか考えてない。帝銀のブログを始めた矢先で実は事件に詳しくもなく、見切り発車で手許にろくな資料もないという状態で、まずは大槻ケンヂが読んだ弁護士・遠藤誠の本が、
 
画像:大田区立図書館
 
この東京都大田区に17ある図書館のどれかひとつにでもないか、と考えて探してみようとしてたとこだから慌てたのなんの。帝銀に関してはインターネットの情報は見ない方針を決めてもいたので困ってしまった。区内の図書館が全部閉鎖? その理由が【感染拡大防止のため】?
 
何を言ってやがるんだ。『リング』の貞子ウイルスと間違えてでもいるんじゃないのか、と思いながら塒(ねぐら)に戻り、テレビをつけてニュースを初めてまともに見てみる。すると画面に出てきたのが、2月の日本国内の死者が400人という話だった。
 
そこでおれが思ったのは、
 
 
 
   「400人? また、えらく微妙だな。それ、本当に多いのか」
 
 
 
ということだった。[多いのか]というのは〈例年と比べて〉だ。《風邪を甘く見るもんじゃない。風邪はほんとは怖い病気だ。肺炎になって死ぬ人がたくさんいるんだぞ》なんて言葉をよく聞くじゃないか。そのたびおれは特に疑うことなしに「そうなんだろな」と思っていたので、毎年日本で何千人も死んでんだろうと考えていたのだ。
 
それは〈たくさん〉ではあるが、だからと言ってどうというほどのものでないとも。交通事故で1万人が死んでるし、火事や何かで何万人という人が毎年不幸な死に方をしている。そして何より癌によってふたりにひとりが死ぬのであり、それは年に百万に近い数字のはずだろう。中には長い闘病の果てに苦しんで死ぬ者も多い。
 
それに比べて肺炎で死ぬなんてのは、比較的安楽な死に方のように語られてきたもんじゃないのか。たとえば昭和最後の年に書かれた小説に、
 
画像:原?天使たちの探偵肺炎 アフェリエイト:天使たちの探偵
 
こんなのがあって、あくまでもフィクションだが、でも実際にこんな話をよく耳にするような気がする。人が肺炎で死ぬなんてのは別に珍しいことでなく、そこらじゅうにいくらでも転がってきた話であって、けど大抵は、
 
「肺炎ですか。怖いですねえ。風邪は怖い病気だとよく言いますがほんとですね。でもあまり苦しまずに畳の上で死ねたということですから、それが救いかもしれませんね」
 
だとか言われるだけで終わり。言われる方も「ええ本当に」などと応えるしかないことで、風邪のウイルスを恨んでもしょうがないのだからしょうがない。死んだ当人や遺族にとっては不幸でも決して悪い死に方をしたことにならず、特に高齢者の場合はむしろ恵まれた末期(まつご)であったようにすら言われる。
 
それが肺炎じゃなかったのか? それに【2月に400】てのは、例年に比べて多いのか。
 
それが多いか少ないかは、〈ここ10年の間〉とか〈平成30年間〉とかの平均と比べてどうかで決まることなんじゃないのか。毎年普通にそのくらい死んでいるもんなんじゃないのか。新型の風邪ウイルスは毎年生まれて世界に広がるものなんだから……後になって実は毎年五百人が死んでいて、今年はむしろ少なかったなんて言わねえだろうな。
 
とさえ思った。あるいはもし平均が100でその4倍なのだとしても、
 
 
 
   「今年の風邪はなんだかほんとにタチが悪いんだってねえ。
    毎年百人くらいなのが四百だってさ。気をつけな」
 
 
 
という、その程度の数字じゃないのかこれは。
 
――といったことをおれの頭は一瞬のうちに考えたのだが、その〈例年の平均〉がいくつなのかわからないしテレビも言わない。ニュースはその【400】という数字をかざして「これは人類が経験したことのない史上最大の災厄なのがわかりますね」とわめいている。
 
「2月に400が死んだのです。四百が。四百もの人命があああ。〈黒死病〉では二千万人が死にました。〈スペイン風邪〉では五千万人が死にました。しかし今の段階で、これはそれらを既に大きく超えているのがわかるでしょう。スペイン風邪では3年かけて日本で二十万なのに、もう四百人なんてえ。もう400人なんてええええ」
 
とキャスターが泣いて言っててこれに〈専門家〉だという学者が、
 
「はい。しかも〈波〉が目前に迫っている状況と言えます。感染が拡大すると〈波〉が来るのですが、来たら日本で数千万。世界で数十億が死ぬ……人類絶滅も有り得ると言う以外にありません」
 
「人類絶滅も有り得ると言う以外にないのですね!」
 
「そうです! 絶滅も有り得るともう言うしかないのです!」
 
とか言っていてそういうことに話が決まっているのがわかった。なるほど、それで図書館も閉鎖されたというわけなのか。
 
と思ったがしかし一体なんなんだこりゃ。まるでなんだか、
 
画像:ドラえもんハリーのしっぽ
アフェリエイト:ドラえもんむかし話編
 
この話みたいじゃねえか。1910年の〈ハレー彗星パニック〉。これはどう見てもまったく同じだ。これを信じたのと同じ頭のおかしな人間が同じことを信じている。
 
そうと知るのにウイルスの専門知識は必要ない。おれの頭ではそれがわかる。この頃に外国にはより毒性の高い型のコロナがいて多くの死者が出てるというのはおれも知っていた。しかし感染の拡大によって日本で独自に同じものが生まれるとか、もっと強力なやつが生まれるとか、そういうことは別にないのだ。
 
可能性はまあゼロではないにしても、決まっていないしそれを言うのは外国のどこかで火山が噴火したから日本で富士が噴火し日本は沈没するとか、外国のどこかで津波が起きたから日本全土が津波に呑まれるとか信じて叫ぶようなものだ。パチンコで隣の台が大連チャンをしたからと言って、アツくなって自分の台がそれ以上に噴くと考えたりしちゃいけない。
 
おれは勝ってきた人間だからそれがわかる。ウイルスの本も何冊か読んできていて、全部図書館で借りて返したものなので『ホット・ゾーン』くらいしか書名を思い出せないのだが、そのどれにも書いてあったことをひとつ憶えてもいた。
 
作品名:端数報告7 作家名:島田信之