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叶わぬ夢

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その2


紆余曲折の道を経て、最終的に受験した大学は卒業できた。
卒業する二年前には教育実習があり、大学の在る町の中学で二週間、後の二週間は地元の私の母校で実習をした。

その間の通学はバスで往復していた。
ある日帰りのバスだったか、後部座席の男性が「Hさんじゃないですか」と声を掛けて来た。僕Mです、とその男は自己紹介した。

その日から彼とは通学の朝同じバスに乗っているのに気が付いた。バスの吊皮を持って立ったまま、どこへ通勤されているのですかという私の質問に、Y高校の教師です、と彼は返事した。

同級生なのに、一方は教師、私は大学三年生、やはり自分が病気の為大分回り道をしてきたことを感じた。
実習が終ればそのまま通り過ぎる相手だったので、実習最終日の朝はお別れの挨拶をしてバスを降りた。気分的には何も感じず、多分彼の方も未練はなかったと思う。

作品名:叶わぬ夢 作家名:笹峰霧子