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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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あの穏やかな ✕ 椰子の木の下

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運命の真実



「その話に乗った方がいいですよ」
 背後から声がして振り返ると、そこに現れたのは、あの船に乗船し行方不明になったはずの監査官だった。
「お、お前、死んだはずじゃ・・・」
クンタも驚いた表情で、全身を震わせて監査官を睨んだ。クンタの顔に傷を負わせた張本人が、生きてここにいるのだから、それも仕方あるまい。
「生きていますとも」
「そんなはずは、船乗りが全員死んだのに、お前なんかが生き残れるはずがない」
「はっはっはっは。確かに船乗りたちは全員海賊に殺されました。あなたを除いてね」
「・・・そうか、お前たちは海賊ともグルだったってわけか」
「そんな証拠がどこにあると言うのだ。フフフ、すべてはお前の戯言にすぎん」
フランコが笑みを浮かべて言った。
「監査官が生きてここにいることこそが、その証拠だ!」
「しかしな、この監査官が航海に出た記録など、どこにもないのだよ」
「なんだって? それもお前が手を回して、記録をすり変えさせたんだな」
「それにも証拠がない。すべてお前の想像にすぎん」
「貿易商や役人までが海賊と組んでいたなんて」
「今に始まったことではない。私の曽祖父(ひぃジイ)さんは、キャプテン・モローなのだから」
マルコはあまりの事実、想像を超えた真実に驚きを隠せなかった。
「フランコ! 全部お前が仕組んだことだったんだな!!」
「その通りだよ。マルコ君。それを知っている君は厄介な存在だ」
「今度は僕を殺すのか?」
「そうしたいところだが、君はサンタ・アナ号の唯一の生き残りとして注目を集めている。これ以上スキャンダルな事件は私としても避けたい。益々保険金が手に入らなくなっては困るのだよ。だから、ここはひとつ取引と行こうじゃないか」
「そんな話に乗ると思うのか!」
「・・・なら私は、君の商売をとことん邪魔してやることにするよ」
「そんな事させるものか。お前の船だって、建造中で止められてるじゃないか!」

 フランコにとって、真実を知るマルコは邪魔者でしかなかった。マルコはすべてを悟った。あれは最初から仕組まれていた航海だった。帰路に物資はあまり積まず、わざと海賊に襲わせ、フランコは保険金で大金をせしめる計画だったのだと。