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人生の織物

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その2


ネットの友達と交流して癒しを得る時期は終わった。今は現実的にもごく近い人と会えることが安らぎだ。気が付いてみると自分の身の回りは実に静かに穏やかになっていた。
娘達は強い熟女となり、もう自分が手を差し伸べてやる必要もない。むしろ私が無事に過ごしているかを遠くから思ってくれている。

地元に少しは付き合える女の友達がいるので、ほとんど電話ではあるが日々の暮らしぶりを話し合っている。一部の趣味を持たない人は心身共に劣化して、きもちが弱ると私に頼ってくる者もいる。
これまで家族が同居していて何の不安もなく生きてきた人は今、とても心細いのだ。それだけ自分の力で頑張らなくても良かった幸せな人達だ。彼女らの今は、子供に守られ、指示さえもされてその通りに動いている。

自分が自分でなくなる分岐点に立っていることに気がついていないのだ。
連れ合いの暴動も家の管理も母親の看取りもひとりで片付けて来た自分とは大いなる違いのある幸せな人生を生きて来た人達。

山あり谷ありの過去を背負って乗り越えてきた自分は、もう何が起きても驚かない。決して強くはないけれど、すべて運命に身をゆだねて心地良く生きてゆく術(すべ)を知っているだけだ。


作品名:人生の織物 作家名:笹峰霧子