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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 8 元カレが帰って来ると

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第2章:充実の毎日



「先生。これ見て!」
 次の日、カウンターに座る恵美莉は、桧垣に左手の甲を突き出した。
「お、誕生日プレゼント? ルビーだね~。よかったじゃない」
「はい」
 恵美莉が受付のアルバイトをする学生相談室で、悩み多き学生たちの相談役としてカウンセリングを行っている桧垣助教授は、彼女の薬指に着けているリングが変わったことに気付いて言った。そして事務机の椅子をコロコロしながら近付いて、
「それ、プラチナ?」
「ううん、ホワイトゴールドです」
恵美莉は椅子を少し後ろに引き、左手を伸ばして受付カウンターの上に置いて見せた。
「前のはシルバーだったから、ランクアップしてもらったの?」
桧垣は何遠慮なく、恵美莉の左手をつかんで、指輪を見た。
「ううん、頼んだりしてないんですけど、あたしは金より銀色の方が似合うからって、これくれたんです」
嬉しそうに笑顔で言う恵美莉。
「ほう、彼氏、カラーコーディネートのセンスあるね。よく映えるよ」
「うふふ、ありがとうございます。プラモで色塗りしてるから慣れてんですよ、きっと」
「ははは、プラモと一緒にされちゃ困るでしょ」
「へへへへ」
「じゃあ、えぇ~っと、今日は4時半からの予約が1件だけだから・・・」
そう言うと事務机の上に置いたカバンの中を、何やらモソモソとかき分けている桧垣を、恵美莉は少し待った。そして桧垣が取り出したのは、表面にリボンを貼り付けた上等そうな紙袋だった。
「あ~ん。ありがとうございます」
「はっはは。もう貰えると思っちゃった?」
「え? ちょっとフライングしたかな?」
「“いいこと”してくれたら、あげようかな~」
桧垣の顔が急にニヤケだした。
「もう、先生。最近そればっかりじゃないですかぁ~」
「今日のアルバイトは、今から1時間くらいすることないからねぇ~」
「新しい指輪してるのに困りますぅ。昨日、春樹君と1周年を祝ったばっかりなんですよ」
「ふふふん、僕のは単なるバースデープレゼントだから」
「春樹君のことは気にするなってことですか?」
桧垣は頷きながら、紙袋を恵美莉に手渡した。恵美莉は少し顔を近付けて、まっすぐ笑顔を見せてから、その紙袋を開けた。