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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 8 元カレが帰って来ると

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第6章:一番大事な・・・



 恵美莉はなんとか理由を付けて春樹とは別れた(←別行動した)が、昼間に見に行った軽自動車にも納得がいかない心境と、ラブホテルを急遽出る為に慌ただしくことを済ませて来たので、もやもやしたまま、(これから颯ちゃんと何を話すんだろう)と不安になって、表情はこの上なく優れなった。
 城下公園駅に帰って来たところを、キッドの車が恵美莉を待ち受けていた。助手席にいる懐かしいながら違和感のある、真っ黒い顔の颯介を見ると、無理に笑顔を作って軽く手を振った。
「・・・・・・」
しかし、車に近寄っても何もしゃべれずにいる恵美莉。颯介は助手席から出て、そのシートを前に倒し、後部座席への通路を開けた彼の第一声は、
「ひ、久しぶり、元気そうだね」
それを聞いて恵美莉は、(元気そうにしてて正解なのかな?)とか考えながら乗り込んで、
「まあまあ絶好調よ」
などと、心にもない適当な事を言ってしまった。そして助手席に颯介も乗り込むと、元々狭小な後部座席は、目いっぱい下げられたシートで足の置き場もないくらいである。
「狭いねこの車」
「スマンな。ちょっと我慢してくれ。それでも1日ドライブに付き合ってくれる女子もいるんだから」
それは今日の昼間のことなのだが、敢えて抽象的な言い方をして、ニヤニヤ笑うキッドだったが、恵美莉の方はそんなことに返答できるほど、余裕のある状態ではなかった。恵美莉は少し腰をずらして、後部座席の中央に座り、二人の間から顔を出した。
「どっか、静かなとこで話したい」
「お店?」
「ううん。人のいないこと」
「じゃ、公園でもいい?」
「うん。近い方がいい」
それで3人は車で城下公園に向かった。
 公園の駐車場に停めると、恵美莉と颯介は二人で、暗い公園の人のいない方に歩きだした。キッドはそれを車内から見送って、暫くそのまま待つのだった。
 恵美莉はなるべく明るい場所を選んで歩いた。颯介を警戒しているのだ。表情だけ普段通りの余裕を見せながら。
(颯ちゃんに対してこんなに構えるなんて、絶対に有り得ないことだと思うのに)
颯介の方は無言で硬い表情をしながら、それに耐えきれなくなったのか、突然話し始めた。
「ごめんな。寂しい思いさせて、もしよかったらまたやり直さないか?」
「え、今更そんな・・・」
恵美莉は急に話しかけられて、ドキッとしながら、中途半端な返答をした。
「元に戻るって言うより、再スタートしたいんだ」
「・・・颯ちゃん。あなたと付き合ってたのは7年間よ」
「ああ、お前のことだったら何でも解ってる」
「でもあたしにとったら、この1年の方がずーーーっと長かったの」