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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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無農薬有機栽培ってスゴイ!(おしゃべりさんのひとり言 94)

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無農薬有機栽培ってスゴイ!



園芸とか家庭菜園などに、興味ないですか?
家で草花を育てたり、野菜を栽培したり。

僕は15年ほど前に郊外に引っ越して来て、庭の広さを持て余していました。
その前は賃貸マンション暮らしだったので、切り花を生けることはあっても、植物を植えることはまずなかった。
何かのお祝いでよくもらう蘭の鉢植えや観葉植物なんかも、すぐに枯らしてしまうほどでしたから。

今の家も借家だけど、庭は更地で自由に使えました。
DIYでガレージを作って、ウッドデッキを設置して、バイクの駐輪場も建ててみました。
でも最初に作ったのは花壇です。住宅街なので(見た目のイメージを大事にしないと)と思ってね。
近所の商店街にあった花屋さんに、季節の苗を適当に仕入れてもらって、植えてみたけど、四季折々にこれやるの、結構手間かかるね。

子供が小さかったので食育になればと、その一角にプチトマトでも植えてみようかと思い、せっかくだから美味しいやつをと考えたんだけど、品種の多さにどれを選んだらいいんだか?
結局ゴールデンウィークに、農家さん向けに経営してる種苗店へ行って相談したら、素人でも育てやすくって甘い『アイコ』って品種を紹介された。しかも色が赤と黄色の2種類あって、子供が喜びそう。
肥料のことや脇芽を取るとか、栽培のコツを聞いておいて、たった3株ほどで実践したら、11月くらいまで収穫できるほど大豊作。

翌年はナスビにも挑戦してみた。でもこれを自己流でやったら、大きな芋虫が付いて、葉っぱが全部食べられるトラブルに。家で食べるのに農薬は使いたくなかったからだけど、プロのアドバイスって必要だね。
子供は「ナスビを食べるお芋の虫」を恨んでた。
(児童文学・童話で投稿の『ナスビのかいじゅう』参照)

それから十数年。僕もそれなりに知識が付いて、草花や庭木も上手に育てられるようになって、最近はハーブや多肉植物にはまってる。
水やりや肥料の種類、タイミング、日照時間まで、植物によって全部違うのを把握するのって結構大変そうで面白い。ハサミやスコップなどの道具にも興味が出てきた。

そこで気になり始めたのが、『無農薬有機栽培』についてだ。
これが大変なことはよく解ってる。でもそんな野菜が売ってると、値段は高いけど特別感があって、つい手に取ってしまう。そんな農家さんを応援したくなるから。
ところが最近は無農薬有機栽培のお米って、少ないんですよね。

ところで、うちの実家の仕出し料理屋には名物が二つあって、鯖寿司と納豆。どちらも看板商品になっているんだ。
鯖寿司はおばあちゃんのレシピを受け継いでて、他にはちょっとない隠し味がある。焼き鯖寿司もブームになるずーっと以前、50年くらい前から作ってるし、それは作れば作るだけ売れる。納豆の方もそれくらい人気だったんだけど、最近ある問題が浮上してるんです。

うちの納豆は昔ながらの製法で、国産大豆を稲藁(いなわら)に包んで自然発酵させる『藁苞(わらづと)納豆』なんです。
今時めっちゃ珍しいので、DIYで作った『室(むろ)』(保温醗酵室)も含め、何度もテレビや新聞の取材を受けています。
そして僕のビジネスグループのネットワークを駆使して、販売網を大きくしてきたけど、メディアで紹介してもらうと、休む暇もないくらい注文が舞い込むんです。
でも最近は、生産量をセーブする必要が出てきました。

それは、稲藁が手に入らないからです。
日本中に田んぼがあるのに、藁を仕入れるのが難しくなってしまってるんですよ。
つまり昔ならコメの収穫の後、藁を天日干しして、いろんなものに活用してきたけど、最近はただのゴミになってるんで、稲刈りと同時に粉砕して田んぼに撒かれることがほとんどだそうです。
それでもうちの店の協力農家さんは、藁を残しておいてくれて、毎年そこから仕入れてたんだけど、そこへ来て次の問題が勃発したんです。
その農家さんが高齢になったために、息子さん世代が田んぼを引き継いだものの、無農薬栽培が面倒だから、農薬を使いだしたんです。

これって現代じゃ当たり前のことですけど、うちの納豆にとっては大問題。
だってその藁で納豆を包むんですよ。食品に農薬が移っては困るでしょ。保健所の認可取るのすごく大変なんですから。
それで無農薬栽培をしてくれる農家さんを探したんですが、もうほとんど見付からないんですよね。しかも一度農薬を使った田んぼとその周辺では、数年間は残留農薬で始末に負えないんです。
今では藁の仕入れ量が、ほとんどゼロになってしまいました。
結局、惜しまれながら事業を縮小するしかなかったってわけですね。

(日本中にはまだ『藁苞納豆』をウリにしてる生産者さんが結構残ってますけど、どんな藁使ってらっしゃるんでしょうか? 正直疑問ですが心配はなさそうです。保健所の担当者の話ですと、最近の農薬っていうのは、メーカーの努力の結果、安全が確保されていて、水道水に入ってる塩素消毒薬のようなレベルらしい。コーヒーの方が人体に害があるくらいだそうです。ただ、検査機関の残留農薬基準が昔のままで、食品でクリアするには厳しすぎるようですけどね)

そこで新しい取り組みを、地域の農協さん(JA)と保健所さんの協力のもと始めました。
田んぼを若返らせる試みです。
長年、化学肥料や農薬に侵されてきた田畑って、人間で言えばメタボや薬漬けの患者と同じ。その土を健康な状態に戻してやろうって挑戦なんです。
周辺の農家さん、と言ってもほとんど、うちの納豆に理解のある親戚みたいな家ばかりで、まだ数軒分の田んぼ約5ヘクタールほどですが。(東京ドーム一個分くらいの面積だって聞きました)
春にレンゲを植えてそれを鋤き込んで、有機栽培を目指します。その為に田植えは少し遅めになるので、米の品種も酒米に変えました。
化学肥料を使わない代わりに、有機肥料を運ぶのは重くて大変だそうです。
イナゴはあまり見られなくなっていたのに、2年目の夏にはその被害が出始めました。こんなに早くイナゴが復活するなんて予想外。
でも納豆の藁苞は、稲の葉より茎を使って包むので、多少のイナゴ被害は問題ありません。
農協さんが、農薬ではない自然材料の忌避剤を調合してくれて、それで何とか凌げたようです。

それから2~3年経って、無農薬有機栽培の底力と可能性を目の当たりにしました。
今年の冬は雪が多くて、田畑にもずっと雪が積もっていましたが、なんとその実験中の田んぼだけ、雪が早く溶けたんです。
無農薬有機栽培に参加していない田んぼには、雪が残ってるのに、きっちりと線を引いたかのように、そこだけ土が現れています。
どうやら田んぼが健康になって、土中の微生物が育ったおかげで、地熱が高いんじゃないかってことらしいです。
元々こんな成果を期待して開始した取り組みですけど、この土で作る農作物と普通の農作物で、栄養や健康にどんな違いが出るのか知りませんが、うちの納豆の復活も案外近いのかもしれません。


     つづく