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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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334.確認方法



 小学生のとき、ちょっと変わった体質の子がクラスメイトにいた。

 その子は不気味な場所に足を踏み入れると、まるで僕らの興味を引くように、いつもお決まりのセリフを言うんだ。

「ここ、居るね」

 最初は僕らも怖がっていたけど、よく考えたら、「何」が居るのかを言わない。僕を含めたみんなは、早合点をして怖がっていたってことになる。

 これは、ちゃんと彼の能力を確かめないと。いや、むしろちゃんと確かめたほうが彼のためになるはず。というわけで、肝試しという名目で彼をとある廃校の音楽室に閉じ込めたんだ。

 その音楽室は、壁に貼ってあるベルリオーズのポスターにそっくりの幽霊が出るといううわさ。同じく壁に貼ってあるシューベルトのポスターにそっくりの殺人鬼が出るといううわさ。メンデルスゾーンのポスターそれ自体が窒息させるために襲いかかってくるっていう、計三つのうわさがあったんだ。だから、ベルリオーズを見たら霊感がある。シューベルトを見たら猟奇的な人が見える。メンデルスゾーンが見えたら怪異が見える、ということになるわけだ。

 小一時間ほど閉じ込めたあと、真っ青な顔をして飛び出してきたその子に聞いたら、首をぶんぶん横に振って何も見なかったと言った。それ以降、彼はつき物が落ちたように、例の

「ここ、居るね」

を言わなくなった。多分懲りたんだろうね。ちなみに、大人になった今でも彼とは付き合いがあるよ。今でも、僕らの大切な友人さ。

 あ、そうだ。この場を借りてお礼を言わなきゃいけない人がいたんだ。その節は潜んでいただき、どうもありがとうございました、シューベルトにそっくりの殺人鬼さん。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔