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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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335.チャンス



 もう一度、チャンスがほしいんです。本当に、彼と僕が怠けていただけなんです。

 それなのに、こんなことになってしまって、本当に申し訳ないと思っているんです。僕らが頑張っていれば、皆さんがご存じの展開にはならなかったんです。

 ええ。僕も彼も、全く予想だにもしていませんでした。彼らに造られたとき、こんな試練が待ち受けてるなんて、考えてもいなかったんです。造ってくれた恩人が、そんな身の上だなんて知りませんでしたから。あんな恐ろしい敵がいる状況だって、事前に教えてさえくれていれば、僕らはもっと頑張れていたんです。

 何を言っているんだ、おまえらでは、どう転んでもあんな結果になっただろう? どうしてそんなことを言うんですか? 確かに結果としては、そのようになってしまいました。けれど、思い描いたことは実現するって、あなたがたもよく言っているじゃないですか。僕らもちゃんと反省したし、生まれ変わりたい、そう思っているんです。
 いまさらもう遅いって? まだ一度、失敗しただけじゃないですか。なりたいものをイメージすれば、絶対に夢はかなうんじゃないですか。なんで僕らには、そのチャンスは巡ってこないんですか。

 僕らはたった一度の失敗で、不当におとしめられているんです。僕らもやればできるってことを、みんなに見せたいんですよ。お願いします。この通りですから、僕らにチャンスをください。


 ……必死に言い募る彼らに、僕はため息をついてから言った。

「そもそも、あなたがたに落ち度があるとは誰も思っていませんよ。わらの家さんと木の家さん」


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔