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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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342.助平じじいの面目躍如



 うちのじいさんの助平っぷりには困ったもんだ。

 もう80過ぎで、既にばあちゃんに先立たれたというのに、昔、買い集めたエロ本 (じいさんいわく、エロ本ではなくビニ本というらしい)を押し入れから取り出してはニヤニヤして見ている。黙って見ているならいいかと思えば、今度はこっそり私のパソコンでアダルトな画像や動画を収集しだす始末。仕方がないので、じいさん専用のパソコンを買い与えてなんとかしたが、このときがまたえらい大変だった。その動画や画像を見つけたのが妻だったからだ。状況が分からないまま、私に魅力がないのかと詰め寄られ、じいさんが口を割るまで信用してくれなかったぐらいだ。
 単に本や写真、動画を収集するだけならまだいいが、他にもある。実際に手を出すのだ。道を歩いていて、好みの女性とすれ違うときにペロッとお尻をなでる。今の時代にそんなことをしたら、6桁7桁の金が飛ぶ羽目になるからやめろと言ってもきかない。「いい女にゃ、それに合ったあいさつをしなきゃ」なんてにやけている。どうしようもないよくボケじじいで、わが家の目下の悩みの種だった。

 そんなじいさんだが、先日、驚くことに40代の未亡人と再婚をすることになった。しかもデキ婚ときたもんだから二重に驚きだ。なれ初めは、例のお尻ペロンだった。毎日しつこく尻をなでるうちに情が移ってしまい、一緒にお茶をし、共通の趣味の演劇鑑賞をし、一夜を過ごし、なんてやってるうちにすっかり出来上がってしまったらしい。しかも、例のエロ画像や動画の趣味にも理解があり、一緒になって見てはキャアキャア騒いでいる。こう書くと常識のなさそうな後妻さんだと思われるが、一時期料亭の仲居をしていただけあって、礼儀正しくて人当たりもいい。年の近さもあってかうちの妻もすっかり仲良くなり、よく相談にのってもらっているようだ。

 金を取られるから尻を触るなとこっちが強く言っていたせいか、じいさんは最近やけに鼻高々だ。二言目には、今の日本の少子化がどうこうとおっ始まる。どういう形であれ、子どもが生まれることはいいことなだけに表立って反論できず、やたらと面倒くさい。そりゃ80過ぎで子を成すのは立派なことに相違ないが、40を過ぎて赤子の叔父ができることになるこちらの気持ちも考えてほしい。

 さて、そんな絶好調のじいさんだが、今度は孫の私にスマホの使い方を教えてくれと言ってきた。またエロ画像でも集めるのかと思い、一度は断ったがどうしてもと食い下がる。若い嫁さんがいるんだからそっちに聞けばいいじゃないかと言うと、あいつには内緒にしたいんだ、と、ポツリ。

 さては、嫁との行為をカメラに収めようという魂胆か。それとも改心して生まれてくる子をカメラに収めたいのか。どちらにしても、この助平じいさんの人生の歯車が、なんでこんなにうまく回ってるんだろうかといぶかしみながら、私はしぶしぶスマホの使い方を教えてやることにした。

作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔