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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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オーナーのステータス(おしゃべりさんのひとり言 その51)

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オーナーのステータス



「自家用車(外車)を有効活用しませんか?」って話が来た。

ついに僕のところにも、その電話がかかって来た。
以前、お世話になっていたボスが、よくこの話をしていたのを聞いてたけど、僕のところにも来たかぁ。
しかしこの業者、どうやって僕が複数台の外車を所有してるって調べたんだろう?

ボスの話だと、車を何台も持っているだけじゃもったいない。
使わずにガレージに眠っているのもある。
ボスは会社経費で購入してたから、税金対策になるんだけど、運用実態がないと税務調査があった場合に困るんだとか。
んで当時、これをどうしようかって考えた。

対策案①:
中古車販売の免許を取る。
これは古物商の資格を申請して、数台分のガレージを確保するだけで簡単に取れるので、少しの経費で済む。
で、販売するように見せかけて売らず、不良在庫という位置付けで、その車を所有する。

対策案②:
使ってない時に、レンタカーとして貸し出す。
単純にお金にもなって良さそうなアイデア。

ボスは対策案②を選択した。
自らレンタカー会社を始めるのは面倒だから、こういった高級外車を貸し出す会社にボスの車は登録されたんだ。
利用予約が入ると、その会社の人が車を取りに来てくれる。
レンタカーのナンバープレートの平仮名は、「わ」が表記されてるけど、この場合は通常ナンバー。
高級外車に乗りたいって人が借りて、誰にもレンタカーと知られずに、“格好付け”出来る。
つまり利用者は個人の車とは知らず、間接的にボスの車をレンタルするってこと。
ボスはその車のオーナーとして、レンタルサービス料の一部を受け取るという仕組み。

ボスは3台くらいそのサービスに車を出していたけど、月に数万円程度しか儲からなかった。
その内に車は返却されなくなってきて、ずっとそのサービスの会社に保管されるようになってからは、自分では乗れなくなってしまったらしい。
そうなると、本当に振り込まれてくる利用料が、正確なのか分からなくなってきた。

実際、僕はこの事業を任されていたわけではないので詳細は不明だけど、ボスは不満が募ったらしく、ある時全車両引き上げた。
すると、車の内外にキズやへこみ、シートの隙間にごみ。ボスの保険は用途違いで適用されない。
訴訟問題になりかけたけど、損害額が数十万くらいでは面倒くさがって泣き寝入りしたみたいだった。

こういう「オーナー制度」って、どこか聞こえがいいと思いませんか?
でも現実は、経費をこっちに持たせて、向こうが儲けるサービスがほとんどです。

例えば、リンゴの樹の「オーナー制度」。
うちの田舎に青少年山の家みたいな場所があって、春にはいちご狩り、夏には川でアユ掴み、秋には栗拾いなどのイベントをやっている。
そこがリンゴの樹のオーナーを募集していた。
その農園に植えてあるリンゴの樹に出資して、オーナーとして登録すると、秋にその実を送って来てくれるってサービスだ。
年によって、その出来と言うか品質に保証はないけど。

一見、夢があっていいよね。でも実態を知って愕然とした。
実際、リンゴの樹にはオーナーさんの名札がぶら下げてある。
一本に3~5名くらい。あれ? 一人一本じゃなかったの?
農園の人に聞いてみた。すると、一応ぶら下げてるだけで、その樹がその人用じゃないらしい。
収穫期には、どの樹が誰のなんか気にしてられないから、全体の収穫が終わったら、出資した額に合わせてランダムに発送してるだけなんだって。
収穫した分、すべて余さず送ってるんだろうか?
つまり、販売先を確保してるだけのサービス。(もうサービスと呼ぶのも嫌になる)
一口1万円で、何個送ってくれるのか知らないけど、それほど品質の高くないリンゴ、要らないよね。

結局は、向こうがどうやって儲けるかを考えた挙句のプランだから、投資したつもりのオーナーが得するなんて話じゃないってことだ。

もっと大きな話だと、空いた土地や建物を委託して、老後のマンション経営を謳う信託事業がある。
建築会社や不動産会社がマンションを管理してくれて、そのオーナーさんには家賃収入が入る。
確かに入る。でもいいのは初めの10年くらい。
それ以降は改装費を請求される。粘って20年無改装でいると、入居者が減ると脅される。
結構経費がかさむのだ。でも、その頃にはオーナーさんは死去してしまって、代替わりする計算になっている。
入居率が悪いと、遺族はそんな経費のかさむ物件を相続するのもつらい。
結果、その管理会社は、あまり経費をかけずに、管理費だけは100%儲けた挙句、さらにその物件を安く買い取ることが出来る。

投資信託ってのも、一種のオーナー制度みたいなものだな。
投資に自信のない人が、信託会社に出資するとその会社が上手に運用してくれる。
本当に上手に? 
利益が出て元金が何倍にもなるかもしれない。でもそれは信託会社の利益。
出資者には普通銀行の利息よりはいいくらいの配当が支払われる。
その会社が投資に失敗したらどうなるの? 元金割れして出資者が損をする。
投資信託会社っていうのは、自腹は切らずにお客さんから集めたお金で投資して、利益を享受する代わりに、マイナスになったっ場合の穴埋めはしてくれない。

これを生活をかけた事業でやられちゃうと、最悪。
コンビニオーナーさん。ご苦労様。
うちのご近所さんが、これにチャレンジしちゃった。

あなたが一所懸命に働いて貯めたお金で、または思い切って銀行から借りたお金で、コンビニのフランチャイズ契約。
コンビニの大手企業の説明、そのシステムを利用させてもらえるって、いい話に聞こえるけど。
あなたが準備して建てたそのお店は、あなたの思い通りに営業させてはもらえない。
開店時間や定休日さえも決められない
お金は自分で出してるのにだよ。大手企業の思惑通りに働かされる。
平社員以下の扱いでも、あなたはその店のオーナーさんなんです。もう後に引けない。
あなたが儲かるようにサポートしてくれるって話だったのに、実態は店の売上にノルマが設定されてる。
それに合わせて、商品は毎日どんどん納入してくれる。これって売り付けられてるってことじゃない?
しかも、近所に同じコンビニをオープンされたりする。
これによってコンビニ大手企業は売り上げが増えるんだろうけど、あなたの店は売り上げが落ちる・・・のなんか許されない。もっと厳しく働かされる。

高級外車のオーナー制度、リンゴの樹のオーナー制度、信託のオーナー制度、コンビニのオーナー制度。
全部同じですね。気を付けて!

大金持ちのボスは、ゴルフ場の会員権、コンドミニアムホテルの利用権とかは、なかなかうまく使えないけど、「ステータスが手に入るから満足だ」って言ってたな。
このレベルなら、オーナーのステイタスは高い。

でも自分が頑張って買った高級外車。それをいいように使われると、そのステータスも落ちてしまう。
つまり、自分が使う側になってこそ、オーナーのステイタスが得られるってことだね。
単に『オーナー』って呼ばれることに、どのくらい満足感があるか考えておこうっと。


     つづく