小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

端数報告2

INDEX|58ページ/67ページ|

次のページ前のページ
 

増えていないな。減ってるよ、というお話


 
まずは前回のおさらいから。おれはおれの考えでは、コロナの感染者報道というのは、
 
「本日は1234人を検査し、98人が陽性と出ました。感染者の割合は都市部で12パーセント、平均8パーセント。一万人あたり800人がコロナに感染しているものと推定されます。首都圏で三百万人、日本全体で一千万人……」
 
と、このようにやらねばならない。これが正しいやり方であり、政府とマスコミがこうやらないならそれは〈できない〉ということであり、そいつらは嘘をついている。
 
インチキ報道なのだ、と。実際の政府の発表の仕方、マスコミの報道のやり方は、皆さんもご存じの通り、
 
「今日はコロナの感染者3456人。また最大を更新しました。これで十日連続での最大数更新です!」
 
という調子だが、〈感染者数〉とは感染者数を指す言葉でなくて〈今日は○人を検査して陽性だったのが△人〉という△の数字である。検査した数が何人なのかわからなければ何割が感染しているかわからん。わからないならそれは意味のない数字だ。
 
おれの脳はそうおれに言う。政府もマスコミも、何人を検査してるかまったく公表することがないし割合を言わないじゃないか。これは「消防署の方から来る人が3456人」と言うのと同じだ。
 
おれの脳はそうおれに言う。消防署の近くに立っててそちらからやって来る人に、
「アナタは今あの消防署の方から来ましたね?」
と言ったら相手は、
「ええまあ」
と応える。これをやったら、消防署の方から来る人をいくらでも増やせる。政府とマスコミはこれをやっているとしか思えん。
 
「今日は消防署の方から来る人が3456人。過去最大を更新しました!」
「今日は消防署の方から来る人が3567人。過去最大をまた更新!」
「今日は消防署の方から来る人が3678人。三日続けての過去最大更新です!」
 
こう言ってるのと同じだが、「アナタは今あの消防署の方から来ましたね?」と訊く人間を少しずつ増やせばできることなのだから大衆の危機感を煽りたければやるだろう。やってる。政府とマスコミはやってる。インチキ発表にインチキ報道なのは明々白々だ。
 
――と。前回はそんな話をいたしましたね。が、しかしおれはいつだったかこのブログに、
 
「今日はコロナの感染者が600人。全体の12パーセントです! 今日はコロナの感染者が800人。全体の16パーセントです! 拡大がこのまま進むと第2・3波が起こる見込みが非常に高いと言えます。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点を持ってください!」 
テレビがこう報道したら、見た普通の人間は、 
「なるほど。感染が二割になると、また猛毒を出す気なのか。そういう戦略を持つウイルスということなんだな。二割どころか、17か18パーセントなのかもしれない。大変だ。大変だ」
 
こう受け取ってしまうと書いたが実のところ、「全体の何パーセント」という報道の仕方をマスコミはしてきていない。
 
と言うか、おれは一度だけ聞いた。あれは4月頃だと思うが、テレビを見てると、
 
「今日は感染者66人。948人を検査してこの数字です。全体の7パーセントですよ、7パーセント。昨日が1092人を検査して65人でした。65から66だとひとりしか増えてないようですが、昨日は検査人数が多かったので6パーセント。一日で1パーセント増えてしまったということなんです」
「えっ、それじゃあ、明日は8パー。あさってには9パーセントになってしまうかも……」
「そうです。すぐにも10パーセントに達してしまうかもしれないわけです」
「そうなったらどうなるんです?」
「わかりません。わかりませんがおそらく、第2波が起きてしまう確率がきわめて高いものと……」
 
なんて言ってるやつがあった。おれはそのときも、
 
「なんだそりゃあ? ノストラダムスの〈1999〉か、マヤの預言の〈2012〉か? 感染者が人口の一割になるとウイルスが変異する法則でもあるって言うのか?」
 
と考えてすぐさまそれをバカバカしいものとみなしてそれきりだったが、そのとき、一度だけ聞いたのだ。日の検査数と出た割合を。いや、正確な数字まで憶えているわけではないが確かにこんなふうに言った。4月か5月、たぶん4月の、志村けんが死んでまだ間もない頃だ。そのときに、おれはまた、
 
「なんだ。一日の検査数が決まっているわけじゃないのか。千人前後を検査して割合を出しているのか。ふうん」
 
とも思ったのを憶えている。厚生省だかなんだかは、そんなやり方をしてるわけだな。まあわかる。キッカリ千人を検査するなんてやろうとしてできることでもないんだろう。それはわからない話じゃないよ。
 
とも思ったのを憶えている。帝銀事件の松井博士は厚生省で防疫の仕事をしていた技官だった。だからコロナも厚生省の仕事だろう。松井博士みたいな技官が5つくらいのチームに分かれて200人くらいずつを検査しそれを合計するのだろうが、キッカリ200人ずつというわけにいかなくて当然。割合を出すに充分な数を検査できればいいのだ。
 
とも思ったのを憶えているが、しかしこれ一度きりで、その後はまったく検査数と出た割合をおれの耳は聞いていない。眼で見て読んだこともない。
 
どういうことだ、とずっと思っていた。あのニュースは割合が10パーセントに達したときに第2波が起こる、そんな法則があるとでも言わんばかりの調子だったが、春頃にはみんながみんなそうであったように思う。10パーセントで〈波〉が起こるように言うからみんながそう思い込んでたが起きなかった。ノストラダムスの予言が果たされなかったように。
 
最初からほとんど割合を言うことがなかったけれどそこで本当に言うのをやめた。これからは感染者数だけ伝えよう。検査人数を明かすのもやめよう。という決定が一般人の知らないところで下されたのだ。今日は感染者100人、200人……。
 
300人、400人。見ていておれは、ハテ、と首を捻っていた。おれはパーセントを気にする。パーセントしか気にしない。〈感染者数〉はそれだけでは意味のない数字だと脳が言う。だから、そうだおれの脳、お前の分析はいつも正しいと応えてこの数字はカッコに入れ、通販番組の、
 
   ※個人の感想です
 
みたいなテロップを付ける。《感染者数400人》。
 
   ※これはこれだけでは意味のない数字です
 
と。もう安心だ。感染者数400人、これはいつ第2波が起きても不思議のない数字ですとテレビは言うが、おれの脳は「デタラメ」と判じる。人数に関係なくそう言っているとしか思えない。これはこれを言っているやつ個人の感想に過ぎんだろう。ノストラダムスの〈恐怖の大王〉が来ると言っているのと同じだ。割合を言わないのはどういうことだ。
 
感染者が400人? それは四割ということなのか。あれから何ヵ月も経つけれど、今でも一日千人前後を検査していて約40パーセントなのか。それともまさか、検査人数を四倍の四千人にしているんじゃないだろうな。
 
作品名:端数報告2 作家名:島田信之