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端数報告2

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画像:四方修(そんなの全然ダメや)
 
でしょう。とにかく看板を、この番組はこうしか見せない。昔見た時、おれは事件そのものよりもこっちの方に違和感を持ったと前に書きましたね。再現ドラマ自体は何も考えず、上川隆也の演技が暑っ苦しいな、としか思わず眺めていた。見終わってから消してしまい、その後で「待てよ」と思った。
 
と前回・前々回に書きました。それで『小説:グリコ・森永』というのを書いて、
 
リンク:ヤマト航海日誌
https://novelist.jp/71614.html
 
これに出してもうそれきり忘れていた。
 
のだが、あらためてふたたび見て、また書く時が来たのだ。ジャジャーン! 事件は1984年3月、おれが中学を卒業するちょい前に始まる。江崎グリコ社長の自宅に銃を持った三人の男が押し入り、風呂に入っていた社長をはだかのまま連れ去った。
 
そして身代金を要求。その額はなんと十億円だ!
 
画像:犯人からの最初の手紙
 
これがその手紙。
《けいさつにも 会社にも 電電公社にも ナカマがいる》
と書いてあるのに注意。〈会社〉とは江崎グリコの会社。〈電電公社〉は今のNTTのこと。「警察に電話したら俺達にはわかる。そのときは社長を殺す」と言ってるわけだがもちろんまだ携帯電話の時代ではありません。そして家人は警察にもう報せた後だった。
 
警察は十億円を用意するが、指定の場所に取りに来る者はいなかった。脅しの通りに社長は殺されたのかと思われたが、数日後、閉じ込められていた河原の水防倉庫からなんと自力で脱出してくる。犯人達は社長を置いてどこかへ去ってしまったと言うのだ。
 
では事件はこれで終わり? そうも思われたがしかし違った。次の手紙が送りつけられ、それには、
 
画像:犯人からの二度目の手紙
 
こう書いてあった。 
《江崎の みうちに ナカマは おらん
 西宮けいさつ には ナカマは おらん》 
と、前の手紙とは逆のことが書いてある。〈江崎のみうち〉がグリコの会社なのは明らかだが、警察にも会社にも、前のは《いる》だったのに今度は《おらん》。
 
これで、
 
「やはり! やはりそうだったのだな! グリコの会社にも警察にも、電電公社にも社長を閉じ込めていた水防組合にも仲間がいるんだ。それも警察に通報したら、必ずわかるほどのところに! そんなことは背後によほど大きな組織がいないことには成し得ない。一体、どういうやつらなんだ。そしてほんとは何を企んでいると言うんだ!」
 
と上川隆也演じる〈ミスター・グリコ〉と呼ばれた新聞記者が叫び、警察でも、
 
「内部に仲間がいるのはもはや確実となった!」
 
と、
 
画像:四方修
 
このおっさんがわめいて内通者探しがされる。ただこの手紙にこう書いてあるというだけを根拠にして。犯人が最初は《いる》と書いたのに次は《おらん》と書くことが仲間がいる絶対の証拠とみなされるのだ。
 
グリコの会社と警察内部に仲間がいた――これについては、事件を語る者達の間で定説となってるようだ。もう絶対に確かだから疑いようがない、と。この、
 
アフェリエイト:レディ・ジョーカー
 
というのを、おれは本で読んでないし映画も見ていないけれども映画の予告編だけはいつか何かで見た。それ見ただけでも主人公の刑事が属するデカ部屋と、脅迫する企業の幹部に犯行グループの仲間がいて、裏に同和だか日本赤軍だか、『レインボーマン』の〈死ね死ね団〉みたいな組織がいる設定なのがわかった。つまりセーチョーの『小説帝銀事件』と同じ。もうそれだけでバカバカしくておれには見れないものだとわかる。
 
アフェリエイト:レインボーマン
 
が、しかし世間では、これがリアルなものとされているらしい。理解できんなあ。しかし世間でリアルと呼ばれたものと言えば『ヤマト』。『宇宙戦艦ヤマト』だ。かつてこの作はリアルと呼ばれた。柳田理科雄も『空想科学読本』の中で、
 
   *
 
 筆者が高校生の頃、『宇宙戦艦ヤマト』が大ブームになった。地上に充満した放射能を除去する装置を求めて、往復29万6千光年の旅に出る物語。この作品によって「アニメは子供のもの」という雰囲気は一変。『ヤマト』は高校生以上の世代にも爆発的な人気を呼んだ。筆者はもちろん、友人たちも口々に礼賛したものだ。
「航海長の島が波動エンジンの始動に失敗するシーンが、実にリアルだ」
「乗務員が望郷の思いにとらわれて逃亡を図るなんて、リアルすぎる」
「砲の発射までに、弾を込め、照準を定める過程が描かれるとは、リアルの極致」
 評価の基準は、とにかく「リアル」。音楽や物語がいいという声もあったが、筆者と友人たちは興味を示さなかった。描写がリアルであればあるほど、男たちの熱い魂と戦争の悲しさが胸に迫り、宇宙への夢も現実味を帯びるような気がして、ひたすら「リアル」探しに熱中した。われらはまじめだったのだ。
 
アフェリエイト:空想科学読本5
 
と書いている。これに続けて、
 
   *
 
 ところが、この話を15歳の福田沙紀ちゃんにしたところ、彼女は首を傾げた。
「あの〜。船が宇宙を飛ぶというお話って、リアルなんでしょうか?」
 ぎょっ、鋭い指摘! 言われてみれば『ヤマト』の根幹を成すこの設定、リアルどころが、荒唐無稽かも……。これはぜひとも科学的に考えなければっ。
 
アフェリエイト:空想科学読本5
 
と書いている。主人公・古代進の話をおれは前回にした。
 
その続きだが、劇場版二作目の『さらば宇宙戦艦ヤマト』の中に一瞬だけ、
 
画像:ナスカ地上絵のようなもの
 
こんな画が映るのをどなたかご存じだろうか。古代と〈ヤマト〉の戦闘機隊が敵の宇宙要塞の中に入っていくところなのだが、これは決して上下がさかさまなのではない。そしてなんだかナスカの地上絵みたいなものがわかりますか。
 
これはずばりナスカの地上絵と同じものなのだという。おれが小学4年のときにお年玉で買った七千円もする通販の豪華ムック本にそう書いてあった。この話の敵は全宇宙の征服をもくろむ恐怖の宇宙帝国なのだが、中でも最も美しい地球を何千年も前から狙い、偵察に来ていた。あのナスカの地上絵は、〈彼ら〉がそのとき残していったものだったのだ……。
 
と。小学4年のおれは、これを読んで怒りましたね。マジメだったのだ。いい歳をした大人が子供にはわからんだろうという考えでいいかげんなことを書いている。そう受け取って怒りを覚えた。帝国が何千年も前から地球を狙っていただと?
 
画像:四方修(そんなばかなことあるわけない)
  
そう思った。その設定はリアルじゃない。リアルじゃないものは許さない、というわけです。何千年も前に来ていたのなら、そのとき征服すればよかろう。人類が宇宙戦艦どころか、車も飛行機も鉄砲も、マッチやセロハンテープみたいなものさえ持たないうちに征服してしまえばことは簡単じゃないか。どうして月へ行くのがやっとの20世紀に攻めてこない。青い地球が欲しいのならば、ガミラスに赤くされるのをどうして黙って見てたと言うのだ。
 
作品名:端数報告2 作家名:島田信之