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火曜日の幻想譚 Ⅱ

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149.きのこの用途



 世にも珍しいきのこが見られると聞き、友人と足を運ぶことにした。

 その場所は○×県の奥にある山だが、私たち2人と係員以外は誰もいない。この世に知っているのは数人というきのこだ。これは期待が高まる。
「おかしいな。ここら辺にいるんだけど」
係員は一生懸命、木の根や草むらを探している。
「もしかしたら、もう「活動」を始めちゃったかな」
「「活動」?」
友人が係員に聞いた瞬間だった。ヒュンっという音とともに、今ちょうど視界に入っていた木の根に数株のきのこが表れる。
「!?」
驚いた私がよく見ようと近づいた瞬間、再びヒュンッと音を立て、きのこは消えてしまった。
「あ、いました?」
係員は、頭をかきながら私に説明する。
「新しく見つかったきのこは、瞬間移動ができるんです。と言っても数メートル程度ですし、同じ種類の菌糸かきのこがいる場所にしか、移動できないようですが」
「菌糸っていうのは?」
「簡単に言えば、きのこの本体のようなものです。菌糸かきのこがいる場所にしか、出現できないということは、港がないと停泊できない船のようなものと思えば分かりやすいでしょう」
「じゃあ、そこまで便利ではないんだね」
「ええ。しかし、私たち人間や、動物、昆虫などに食べられそうなときには、十分使えます」

 係員の説明を聞いてると、少し離れたところから声が聞こえた。
「おーい。捕まえたぞー」
満面の笑みで友人が、一株のきのこを持ってやってくる。私はその光景を見て、急に不安を覚えた。
「危ない! 今すぐそれを放して!」
私の不安に呼応するように、係員もあわてて叫ぶ。だが次の瞬間、友人の手がぐんと膨れ上がり、瞬時に数百株のきのこまみれになっていた。
「う、うわぁ」
友人は、すぐさま救急車で病院に運ばれた。後で係員に聞いた話によると、きのこ本体があれば、ところ構わず出現してしまうため、木や土の中に出現したり、先ほどの友人のように不用意に持ったりすると、体内に出現されてしまうこともあるらしい。
「……これ、兵器として使えるんじゃないですか」
青ざめた顔で問う私に、係員は小さな声でささやいた。
「だから、ごくごく内密にしているんですよ」


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅱ 作家名:六色塔