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耐える力

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その一



若い時は我慢をする力を養う必要がある。
少しぐらい怒られても我慢して反省し前向きに進んでいく力がなければ伸びない。

私はこれまでそれほど我慢をする必要がない生活の中で生きてきたが、頑固な父親が居たり、嫁に行ってきつい姑が居たり、パートナーとの折り合いが悪かったり、そのような状況でもくじけていては思春期に不良になったり、結婚すれば家を出たり果ては離婚するはめになる。
逆境を乗り越えてこそ、強い精神力が育ち、よりよき未来の生活の中に身を置くことができるのだ。

自分の人生を振り返ってみると、子供の時は片親だったので寂しくはあったもののそれほどみじめな思いもなく過ごしていた。
成人しては嫁には行かず婿を取る身となる。

姑はできた人で難をつける欠片もなくいつまでも生きていて欲しかったと思える人だったが、不幸にしてくも膜下の手術を受けて人として正常な感覚がない十数年を入院したままあの世の人となった。
今では病気になるまでの十年間の良い思い出だけが残っている。

離婚をしたいと衝動的に思ったことがある夫婦生活だったが、還暦を前に脳梗塞で倒れたので病気の者を見捨てるわけにもいかず、私自身子供を養っていく収入も大してなかったので痴呆がかった人間と共に晩年まで過ごした。

大人しい病人なら介護も厭わしくはなかったろうが、暴言暴力が現れるときがありその時は逃げ惑うこともあった。
亡くなって預金通帳の名義を自分に書き換えたとき申し訳ない気がして、又友人にも見捨てられて私に当たり散らすしかない長い年月はさぞみじめで辛かったろうとの思いがこみ上げてきた。
最後を看取るまで別れずに過ごしたことを私としてはやり遂げたという満足感があった。
何より娘達にとって家族に父親がいて、亡くなってもその存在が指針となり支えともなっているのは幸せなことだ。



作品名:耐える力 作家名:笹峰霧子