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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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「ほ、本当、ありがとう!!(あ〜、よかった)」
「じゃあ、アタシ還るね(さっさと別の人に憑かなきゃ)」
 心から安堵するルーファスに別れを告げて還ろうとする悪魔だったが……。
「あれっ?」
 悪魔が素っ頓狂な声を上げた。思わずルーファスの動きも止まる。
 まさか……!?
「どうしたの? 早く還りなよ」
「えいっ! ……あれぇ?(おかしいなぁ?)」
「……どうしたの?(嫌な予感がするんですけど)」
 それは予感では済まなかった。
 仔悪魔はさらっと言い放った。
「還れないみたい」
「…………」
 ルーファスの思考一時停止――。ルーファス再起動。
「……今なんて言ったの?」
「う〜ん、原因はわからないんだけど、あなたの身体から離れられないみたい(こんなこと初めてだからなあ?)」
 ルーファスフリーズ。だがすぐに解凍、そして爆発。
「な、なんだって!! 何っ還れない!! どういうこと!!」
 脳内で処理できない事柄はパニック現象を引き起こす。ルーファスはそれが特にわかりやすく外に出た。
「さっき間違ってアタシを召喚したって言ったでしょ? きっとそれが原因だよ(……たぶんだけど)」
「ど、どどど、どうすればいいの?(あ〜、カミサマ私はなんて不幸なんでしょうかぁ〜……ぐすん)」
「アナタとの契約内容は、アナタの魂が尽きるまで願望を叶えるというものだから……きっと、アナタが死ぬまで離れられないのかな?(……イマイチ自信ないけどね)」
「ま、マジで?(泣)」
 絶望の淵へと再び追い詰められたルーファスは、独りになろうと部屋の隅に行くが、彼の影は当然彼とともに移動する。
 部屋の隅でルーファスは体育座りをして『の』の字を涙で床に書く。――そんな彼には解決の糸口はきっと見つからない。
 また歌を歌って現実逃避をし始めたルーファスの影に変化が起きた。な、なんと影の中からピンク色をしたツインテールの髪の毛らしきものがニョキっと生えぴょんぴょんと揺れ動き、しばらくして黒い物体が這い出して来た。
 ルーファスは目を見張った。
「!?(マジで!?)」
 ルーファスが今目の前にしているものは、ツインテールのピンクの髪の毛に黒い生地にフリフリレースのついたゴスロリ服、――靴の底は高い。
「っもう、ショ気ててもなんにもならないでしょ?(涙いっぱい流して、子供じゃないんだから)」
 あどけなさの残る13〜15歳くらいの美少女の足が、短めのスカートからスラリと伸び、仁王立ちを作っている。これはルーファスにとって新たなショックだった。
「君が悪魔?(人形みたいに可愛いけど……どう見てもお子様)」
 今ルーファスの前に立っているゴスロリ少女が悪魔の真の姿だった。
「だから、アタシはちょ〜可愛い仔悪魔のシェリル・B.B.アズラエル。愛称はビビ、歳は今年で426歳、えっと好きな食べ物は人間の魂とチョコも好きだよ、甘いやつね、それから、それから、(え〜っと……)」
 こんな悪魔を目の前にしてルーファスの口は思わずツルっと滑った。
「こんな子供に魂取られるなんて、ヤダよぉ〜(大泣)」
「子供とは失礼ねえ、これでもアナタより何十倍も生きてるだから(アタシから見ればアナタの方がよっぽど子供よ)」
 ちなみにこの悪魔はルーファスの約25倍生きている。
「私より長生きしてるなら、還る方法探してよ」
「だから、アナタの魂を全部貰うまで還れないって(たぶんだけどさあ)」
 悪魔はそれを実際にわかりやすく見せるためにルーファスから遠ざかろうと離れたが、5メティート(約6メートル)のところで足は動いているのに前に進まないという現象に襲われた。
「わかった? これ以上は進めないの(……本当は無理すればもうちょっと行けそうだけど、アタシの存在が危うくなりそう)」
 ルーファスはこくこくと頷いたあと、悪魔から離れるようにして急に動いた。
「あうっ!(いきなり動かないでよ!)」
 悪魔の身体はルーファスの動きに合わせて引っ張られた。
「……本当だ」
「『本当だ』じゃないでしょ、いきなり動かないでよ、ビックリするでしょ?」
「ごめん……でも、困った(ホントどうすればいいの?)」
 まだまだ、未熟な魔導士ルーファスには本当にどうすればいいのかわからなかった。しかし、方法がないわけではない。
「(この子を消滅させれば……でも……)」
 この悪魔を消滅させればルーファスは無事解放されるが、ルーファスにはできなかった。消滅イコールそれは相手を殺すということになる、もともとルーファスはそんなことのできる人間ではなかったし、それにこの悪魔の見た目が人間と全く同じでしかも少女だったことが余計にルーファスに戸惑いを覚えさせた。
 しかし、相手は正真正銘の悪魔だった。
「魂全部くれればきっと嫌でもアタシはアナタから離れることになると思うから、よろしくね♪」
 少女は本当の悪魔の笑みを浮かべた。その笑顔は激マブだが、騙されてはいけない。相手はルーファスの魂を取ろうとしているのだ。
 肩を落とし暗い影を落とすルーファスの肩をポンと軽く叩く悪魔。
「外に出てると疲れるみたいだから影の中に戻るね」
「あ、うん(どうしよ〜、どうしよ〜、どうしよ〜)」
 『どうしよ〜』で頭のいっぱいのルーファスは気のない返事しか返せなかった。今の彼はそーとー追い詰められている。
 影の中から声がした。
「あ、そうだ、アナタの名前聞いてなかった」
「え、私、私の名前はルーファス」
「ルーファス、名前は結構カッコイイね。じゃあ?ルーちゃん?ね、アタシのことはビビって呼んで」
「……あ、うん」
 そんなこんなで、この日からルーちゃん&ビビの?祓う?か?奪う?かの奇妙な共同生活が始まってしまったのだった。