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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開

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その男は機関銃を隊員たちが潜伏している家に向けた。夕暮れの闇に目を凝らし、こっちの様子をうかがっている。ブラウンたちは、屋上に設置された土で固められたようなレンガの柵に身を潜めた。

 俺は小隊長の言うとおり、住人たちをロープで柱に縛り付けた。住人の男の一人は、俺を睨み付け、小声で文句を言っている。俺は混乱している。今にも引き金を引きそうだった。
「・・ーネル。・コーネル! オコーネル二等兵!」
小隊長の声に、ハッと我に返った。俺は小隊長を睨むように見返した。
「ここは俺に任せて、お前は屋上に行け!」
 俺は言われるままに階段に向かったが、その間も俺を睨む住人達に拳銃を向けて歩いた。
(こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃ・・・)
狭い階段を上りながら、この後自分たちがどうなってしまうのか考えた。しかし、どうすることもできない。外ではゲリラが俺たちを探している。救援部隊はどうして来ないんだ? 俺は屋上の開いたままのドアの前に立った。すると、屋内から漏れるLED照明が影になったことに気付いたブラウン軍曹が叫んだ。
「伏せろ!」
俺は咄嗟にしゃがみ込んだが、軍曹は大慌てで、伏せたまま狙撃姿勢を取って、小声でつぶやいた。
「やめろやめるやめろ!」

 ブラウン軍曹は、30メートル先の機関銃の男を凝視していた。その男が俺の影に気付いて、銃の安全レバーを外すのが見えた。
(ダダダダダ! ダダダダダ!)
強烈な弾丸が一瞬で屋上の柵を破壊した。強力な機関銃相手では、こんなバリケードじゃ持ちこたえられない。俺は、ヘルメットを深くかぶり床に突っ伏した。その瞬間、
「クソッ!」
軍曹はそう叫ぶと、自らの自動小銃をぶっ放した。
(タタタ・・・)
機関銃の男に命中して、その男はべランダの床に倒れた。周囲は騒がしくなった。その銃声を聞いて、住民たちは物陰に隠れたが、明らかにこっちを見ているはずだ。
「どうした!?」
階下から小隊長の声がした。
「住民からの銃撃がありました! 全員無事です」
俺がそう答える途中で、軍曹が
「またか? 頼む。やめてくれよ」
その視線の先を見ると、さっき撃たれた男の父親だろうか、嘆き叫びながら、撃たれた男を抱き起して、こっちの方を探している。そして、銃撃で崩れた屋上の柵を見付けたのだろう。咄嗟に機関銃を握り、立ち上がった。
「撃つな撃つな!撃たないでくれ!」
軍曹がまたつぶやいた。
(タタ!)
一瞬でその年老いた男は撃たれ、仰向けに倒れた。更にそこに男の子が飛び出してきた。
「嘘だろ!」
その子の父親と祖父だったのだろう。倒れた二人に覆いかぶさるように抱き付き、泣き出した途端、機関銃を拾い上げてしまった。俺は心の底から祈った。
(もうやめてくれ!)
(ダダダダダダダダダダ・・・)
重たい機関銃を全身で支えながら、その子はこっちにぶっ放してきてしまった。軍曹は床に伏せたまま我慢したが、柵が完全に崩れ、外から屋上が丸見えになる前に、引き金を引いた。そして悲しい音が響いた。
(タン!)

 次の瞬間、それを目撃した周囲の住民たちに紛れていたゲリラから、一斉に銃撃が始まってしまった。屋上にいた4人は、応戦するしかなかった。小隊長も駆け付け、一斉に四方八方に撃ちまくった。

(パシューーーン!!)

突然、耳を刺すような甲高い音が聞こえて、目の前に炎が上がった。

(ドカーン!!)というバカでかい音とともに、俺はゲリラたちの背後の大通りから、銃を撃ちながらこっちに歩いてくる隊列を見た。ゲリラたちは撃たれて道路に倒れこみ、またチリジリなって乱射しながら建物の中に逃げ込んだ。
 暫くして銃声が止んだ。そしてその隊列の足音だけが響いていた。

ガチャン、ガチャン、ガチャン、ガチャン、ガチャン・・・

 まったくズレもなく、揃った足音が近付き、その姿がはっきりと見えると、俺は自分の目を疑った。
「バトルロイド機甲部隊・・・ついに実戦投入されたのか」
エミリオ・ロペス小隊長がそう言うと、アンドロイド兵の後方から、救援部隊の装甲車が到着した。