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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開

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 窓から外を眺めて朝食を摂る。炭素合成したパンに、本物の卵と牛乳。バターも作っている。まだ足りない栄養素もあるが、それはタブレットで補給しているから問題ない。すべて合成食糧でまかなう方が効率的なのだが、エルは自然食にこだわる。この星の人口が増えた時のために、食の効率化以上に、多様化を重要視しているようだが、よく理解できない。食文化の多様性など、私にはない感性だ。しかし料理や加工が必要であれば、作業内容が複雑化して、社会の発展に結び付くという理論と考えれば、納得も行く。効率より大切なもの。私ももっと勉強が必要かもしれない。
 それでもやっぱり私は、食事しながら今日一日のスケジュールを整理し、最も省エネルギーで効率的に作業が進められるようにしている。風はまだ止んでいない。早くリンゴの木を植え替えたいが、しばらくは無理そうだ。エルにいい報告が送りたいのに。
 仕方がない。今日は、インフィニチウムの採掘を前倒しすることにする。すでに地下3万2124メートルまで掘り進めたが、まだインフィニチウムの反応は出ていない。原石が固体で存在できるぎりぎりの温度になる深さに到達してしまった。必ずその下にあるはずなのだが。
 それにしても、搾りたての牛乳は美味しいものだな。最近知ったのだが・・・。

 この星のエネルギー開発は、最も重要で危険な任務になる。万能元素インフィニチウムの採掘は、エルと二人で、何度もホログラムチャンバーでの実験を繰り返して、失敗を重ねてきた。3Dシミュレーションでは、大爆発を起こしてエルが吹き飛ぶ姿を何度も見た。もちろんシミュレーションでは何の被害も受けないのだが、もし実際に同じような事故が起こって、彼女が損壊、または廃機というようなことになれば、私はここでの任務を一人で引き継がなくてはならなくなる。それは出来そうにない。開拓に不安があるのではなく、上官であるエルに対しての自責の念が・・・これは感情なのだろうか? エルが留守でよかった。少なくとも私のミスで、彼女が被害を受けることはない。

 地下32キロからの土砂を汲み上げる作業は、容易ではない。高温高圧の地中でソニックドリルが砕く岩盤に、耐熱セラミック管のトンネルを埋め込みながら、反重量の作用で徐々に岩や砂を持ち上げてくる。パワーローダー(外骨格装着式重機)で、それらを運び出す作業を止めてしまうと、忽ち掘削ポイント周辺は土砂の山になってしまう。掘削を止めては、土砂を除ける。一人で行うには少々効率が悪いが、確実に穴は深くなっているのだから問題ない。しかし、もし掘削ポイントが見当違いだったら、貴重なプラズマエネルギーの浪費に他ならない。・・・これは、心配という感情なのだろうか?