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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下

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 リーウだった。「急にいなくなって心配してたのに、こんな所で逢引きして!」
「あ、逢引き!? 違う! 違うのよ! 誤解よ!!」
 暖野は真っ赤になって否定した。
 ちょっと、カクラ君も何とか言ってよ――!
「誤解? そんなに真っ赤な顔して?」
 リーウが詰め寄る。
「もうっ! ホントなんだから!」
「悪いが、マーリ」
 フーマが落ち着き払った声で言う。「これは、タカナシの言う通り誤解だ」
「フーマも隅に置けないわね。警報を利用して、ちゃっかりしけ込んでるんだから」
「タカナシと俺は、警報が解除される直前に院長室に呼ばれた」
 リーウの挑発には乗らず、フーマがあくまでも冷静に言う。
「え、それ本当なの?」
 真面目な顔で嘘をつくフーマに驚きながらも、暖野は首を何度か縦に振った。
 変に思われるより、今はフーマの嘘に乗っておいた方が得策だ。
「じゃあ、ノンノとフーマはあの警報が何だったか知ってるのね?」
 リーウが訊く。
「ああ、知っている」
「あれは何だったの?」
「知りたいのか?」
 フーマが悠然と言う。
「当たり前よ」
「知ったら、後悔するぞ」
 リーウが唾を飲み込むのが分かる。
「覚悟はあるんだろうな」
 リーウが黙って頷く。
「あれは……」
 フーマが勿体ぶるように間を置く。そして言った。「誤報だ」
「は?」
 リーウは間の抜けた声を出した。
 暖野でさえ、驚いてフーマの顔を見たくらいだ。
「ちょっと、誤報って?」
「言った通りだ。あれは誤報だ」
「そんなはずないでしょ? 何か隠してるでしょ、あんた達」
「だから、後悔すると言ったはずだ。期待はずれで悪かったな」
 リーウは気圧されたように二人を見る。
「でも、何であんた達が学院長に呼ばれたの? それと警報とは関係ないの?」
「ない」
 フーマが断言する。「俺達が呼ばれた理由については話せない。学寮部から黙秘するよう言われている」
 疑いの目を二人に向けながらも、学寮部の名前を出されてはリーウとてこれ以上追及は出来ないようだった。
 リーウが、暖野の方を見る。それを見たフーマが畳みかけるように言う。
「タカナシから聞こうとは思うなよ。こいつを退学処分にしたくないのならな」
 これはリーウに対しての最大の脅し文句だった。
「わ……分かってるわよ。もうこのことは聞かないわよ」
「俺達はここで、そのことについて話し合っていたところだ」
 フーマが言う。
「そ、そうなの」
 リーウの顔が引き攣っている。「じゃあ、私、色んな意味でお邪魔だったみたい」
 リーウが後ずさり、図書館を出ようとする。
「待って、リーウ」
 暖野が呼び止める。
「だって、あんた達、大事な話があるんでしょ?」
「それはもう終わったのよ」
 図書館を出ると、リーウは駆け出した。
「行ってやれ」
 フーマが言う。
 暖野は振り返って頷くと、リーウの後を追った。