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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上

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 リーウは紙を丸めて放り出す。それをやるから散らかるのだ。ゴミ箱に捨てればいいものを。
「起きたらノンノがいないし、制服もないし、寝過ごしたかと思ったわよ」
 暖野は笑った。
「でも、目覚ましで起きたんでしょ?」
「当たり前じゃない」
「はい、偉い偉い」
 暖野はリーウの頭を撫でた。
「止めなさい! 子供じゃないんだから」
 リーウがむくれる。
「そう言えば、始業時間って何時だっけ?」
「まだ大丈夫よ。ご飯食べる時間は十分にあるから」
「顔はもう洗った?」
「あのね」
 リーウが言う。「あんたって、時々お母さんみたいになるのね」
 彼女の話では、ベルで目覚めたのはいいが暖野が制服ごと消えていて、うろたえて捜していたのだそうだ。そして窓を開けるとちょうど下に暖野がいたと、そういうことだった。書き置きは、その後に見つけたらしい。余程慌てていたのだろう。紙はリーウの目の前にあったはずなのに。
「それで、私を捜したって、どこを? トイレとか食堂とか? その格好で?」
 リーウの身支度を待って、二人は朝食に向かう途中だった。
「クローゼットの中とかベッドの下とか」
「そんな所にいるわけないじゃない。猫じゃあるまいし」
「焦ってたのよ」
「起こしちゃ悪いって思ったけど、却って悪いことしたみたいね。ごめん」
 暖野は謝った。
「いいのよ。なんかね、ノンノとはずっと前から一緒にいるみたいな気がしてさ。前はそうじゃなかったんだけど、何でだろう」
「なんかよくわからないけど、有難う」
 朝食を摂りながら、暖野はアルティアと会っていたことを話した。戻れない理由についての考えも言ったが、それは彼女にも分からないということだった。
「もし私があの時にノンノが墜ちるのを止めたのが原因だとしても、それは私には理解できないわ。力がどう作用して戻る手段を封じることになったのかなんて難しすぎる。先生に訊くのが一番いいと思う」
「そうよね。変な力が働いてたのなら、先生も気づいてるはずだし」
「何も言わなかったってことは、多分それは関係ないってことなんかじゃいかな」
「うん」
「んで、ノンノがここにいるべき理由ってのが問題になるのか」
「私は、勉強しないといけないのかなって。だって、ここに来たのも、そのためなんだし」
「確かに。あと、前にも言ったけど、力の制御方法ね。私としては、そっちの方が重要だと感じるなあ」
「そうね」
 暖野は言う。「あの時も、移動するだけなのに飛び上がっちゃったし」
「力み過ぎなのよ。もっと気楽でいいのよ。あの時は初めてだったから仕方ないけど」
「力み過ぎ……か。うん」
 その通りだと、暖野は思った。この方ずっと、何かにつけてそうだったと。
「考えたって無駄なものは無駄!」
 リーウが思いっ切り暖野の肩を叩く。
「ちょ……ちょっとは加減してよ!」
「あははは!」
 リーウが声をあげて笑う。「いいじゃん。これくらいしないと、ノンノの悩み癖は吹っ飛ばないでしょ」
「これ、癖じゃないし。悩みたくて悩んでるわけじゃないし」
「いいのいいの」
 それでもまだ、何度も叩いてくる。
「痛いって、もうっ! また飛ばすわよ」
「ごめーん」
 両手を擦り合わせるものの全く悪びれてもいないリーウに、暖野は溜息をついた。
「もういい。学校行く」
 暖野は席を立つ。
「え? まだ早いよ」
「レポート書かないといけないし」
 それも理由だが、暖野はこのおかしな雰囲気を少しでも早く脱したかった。このままでは、いつまで叩き続けられるか分かったものではない。
「そんなもん、うっちゃってしまえばいいのに」
「そういう訳にはいかないわ。自分でやるって言ったんだから」
「あんたって、ホントに損な性分ね」
 リーウは言った。「まあいいわ。少し早いけど、行きましょ」
 自分が言い出したにも拘わらず、いつの間にかリーウに先導されている暖野だった。