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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上

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 アルティアが言う。「通いの人に、稀にそういうことが起こるのは聞いたことがある。でも、戻る方法を私に訊かれても、私ではどうにも出来ない。ごめんなさいね」
「いえ……。分かってるんです」
「そうね……」
 アルティアが視線を宙に向ける。「そう、明日、カクラ君が来たら訊いてみるといいわ。私からも言っておくから」
 やった――!
 暖野は心の裡でガッツポーズをした。
 これで、自分から無理に声をかけなくても済むし、変な誤解をされることもない。
 だが、それだけだろうか? 
 ただ単に話すきっかけを得られたことを喜んではいないだろうか?
 この時点での暖野はそこまで深く考えてもいなかった。
「どう? してやられたでしょ?」
 アルティアの部屋を辞してから、リーウが言った。
「何を、どう?」
「彼女のファッションよ」
「あの……」
「アルティのセンスは皆の憧れの的なのよ。彼女の着こなしを見たら、誰もが自分がボロ纏ってるように感じちゃうのよ」
「ふうん、そうなの」
 暖野は気のない返事をする。
 だって、ゴスロリじゃない――
 リーウのラメロリよりはいいかも知れないが、所詮ロリはロリだ。
「私ももっと、ファッションの勉強しなきゃ」
 リーウが言う。
 リーウが覚悟しろと言ったのは、このことだったのかと暖野は納得した。暖野よりもリーウの方が凹んでいる。凹みどころが違うとは思うが、この世界の憧れがロリータなのだと思うことにした。
 ただ、男子がどうなのかは分からない。当然、男子寮と女子寮は別にあるはずだ。男子の普段着がどんな風なのか興味が沸いてくる。今日は学内で男子の姿を見ていないので、もっと違う所にあるのだろうか。
「ねえ、ここは男子の寮はないの?」
 暖野は訊いてみる。
「どうしたの、いきなり? フーマ以外にも気になる子がいるの?」
「違う違う! それに、カクラ君以外にもって、どういう意味よ」
「べつに。ただ、さっきもアルティが仲を取り持ってくれるって言ったとき、すっごく喜んでたから」
「変な風に受け取らないでよ。アルティアさんは、戻る方法のことを言っただけじゃない」
「まあね。ここにいると、あまりお互いに深く関わるのは避けてしまうようになるしね。ましてや通い同士となると、住む世界が違うから難しいよね」
「だから、違うんだって」
 暖野は反論する。
「うん、私が悪かった。ノンノもフーマも、いつかはここからいなくなる。私もだけどね。仲良くなってからじゃ辛いよね」
 リーウが真面目な口調になる。「でもね、自分の気持ちに素直になりなよ。どのみち別れるなら、後悔しないように」
「違うんだって……」
 暖野は、リーウを上目遣いで見た。
 そう、この学校の生徒は通いも寮住まいも含めて、いつかは元の世界に戻って行く。そして恐らくは二度とは会えないだろう。学内で親し気なグループをあまり見かけない、それが理由に違いなかった。
 フーマもそうだ。彼は暖野より一世紀も後の時代から来ている。暖野が無事に現実世界に戻れたとしても、彼が生まれるのは百年ほども後だ。たとえ医学が劇的に進歩して寿命が延び、実際に会えたとしても歳の差どころの話ではない。
 この学院では様々な時空から来た、時代も文化も違う生徒たちが学んでいる。特異点、と学院長は言っていた。学問的にはどうかと思うが、この空間は奇跡だと暖野は思った。