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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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忘却の箱

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いい日旅立ち


 あれは、小学一年生のとき。
 私の通っていた小学校は街中の学校で人数も少なく、幼稚園からのクラスがそのまま上がって来ていた。
 だから、友達関係もそのままだった。
 当時、校庭の一角に植込みがあって、そこの岩でサラサラの砂を作るのが流行っていた。
 流行っていたというか、それは私たちの間だけのことだったのかも知れないけど、休み時間のたびに集まっては砂で遊んでいた。
 男ふたり、女ふたり。
 子どものことだから、仲が良ければ性別なんて関係なかった。
 その時は、たまたま他の男の子と女の子がいなかった。
 たぶん、そう。
 いたのかもしれないけど、私の記憶にはない。
 いつものように岩のくぼみにグランドの砂をかけて、そこから流れ落ちるサラ砂を作っていた。
 集める? そんなのじゃなく、ただ作っていただけ。
 すごいねー、サラサラだねーって、ただそれだけ。
 その女の子は、ちぃちゃんと言った。
 ちっちゃくて、可愛い子だったと記憶している。
「ウチな……」
 その子が唐突に言った。「よそ行かなあかんねん」
 その時、私が何を言ったのかは全く覚えていない。
 私が覚えているのは、その子が言った言葉だけ。
「なんかな、病気なんやて」
「学校、いたらあかんねんやて」
「こうちゃんとな、一緒に遊びたいんやけどな」
「みんなと一緒にいたいんやけどな」
「あかんねんやて」
 多分私は、「なんで?」くらいのことしか言ってなかったと思う。
 その子は泣いてた。
「みんなと一緒にいたいねん。せやけど、あかんねんて」
 そんなに泣きながらも、その子が言った言葉。
「ごめんなぁ。もう一緒に遊ばれへん」
 私がどういう反応をしたのかは、全く覚えてない。
 でもその時、確かに憤りを感じていたはず。
 その時、その感情の意味なんか分からなかった。ただ、なんで、ちいちゃんがどこかへ行かなければいけないのかと、悲しみだけは感じていた。
 ただ、その悲しみは自分のものであって、ちぃちゃんはもっと悲しくて不安で寂しかったと思う。
 何年か後に知った。
 ちぃちゃんは、大きくなれない病気だったということを。
 そして、一年生の1学期半ばに強制的に特別学校に転入させられたことを。

 私は憶えてる。
 ちぃちゃんが言ったことで、一番印象に残っていること。
「なぁ、こうちゃん。“いい日、旅立ち”って知ってる? いつか、そんな日が来たらええやんなぁ」
 でも、それをどんな思いで言ったのか、今となっては私は知ることも出来ない。

作品名:忘却の箱 作家名:泉絵師 遙夏