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夢幻圓喬三七日

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「昭和何年の一円玉とか五円玉とか硬貨を集めてるの。発行された年のを揃えるっていって、昭和32年の五円玉とか昭和33年の十円玉なんかがあったら、高く引き取るからって部内の人に声をかけてるわよ」
「聞いたことがあるけど、本当にそんな人がいるんだね」
「それだけじゃなくて、古銭っていうの? 古い硬貨も集めているみたいだけど、これは部内に声をかけても誰も持っていないから無意味よね」
 そこまで聞くと師匠は和室へ行き、袋を持って来てテーブルに置いた。あっ三途の川の渡し賃だ。
「こんなのがあるんだが、どうかね?」
 そう言って袋から古銭を取り出し、一枚ずつテーブルに並べ始めた。長年大なんとか、僕にはほとんどの古銭の漢字は読めない。
「写メとってもいいですか? 柴田さんは何でこんなの持ってるんですか?」
 僕は師匠には写メのことを、美代ちゃんには三途の川の渡し賃のことを説明した。
「でも、そんなに大切なおかねを譲るわけにはいきませんよね」
「なに、葬頭河の婆とは顔馴染みだし、必要ないよ。大事にしてくれる人に持っといてもらった方が銭(ぜに)も喜ぶだろう」
 その日は師匠と二人で駅まで美代ちゃんを見送った。
 そんな楽しいが先の見えない六日目だった

作品名:夢幻圓喬三七日 作家名:立花 詢