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Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変―

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本行寺道理「…で、そのオカルティック助言で思い付いたのが、手前のVRを造り、そいつに『吊られし者』の役割を押し付けるって事か…回りくどい」

塔樹無敎「ゲームで確実に負けない方法は、そのゲームに参加しない事だからな」

本行寺道理「それには散水…いや、賛成」

 アプリコーゼンに居た塔樹無敎は、「事実を転回させる」という意味の込められたタロットカードを装備した状態で、﨔木長門に射殺された。その瞬間、「塔樹無敎は死亡した」という事実が「偽」となり、「塔樹無敎は生存している」という事実が「真」となる運命が、確定したのである。そして、この確定した運命を現実に適用した結果、「殺された塔樹無敎は偽者であり、本物の塔樹無敎が別に存在する」という「世界」が、数多の確率=可能性の中から選択され、今こうして「現実」を構築しているのである。私達が認識している現実世界とは、実は無限大に存在する宇宙時空間の、その一つでしかない。この「運命の相対性」こそが、塔樹無敎が十三宮聖から授かった智慧にほかならない。やはり、知は力である。

津島長政「夜這(よば)れし者は、汝等か?」

 前方に、全身を黒衣の包帯(veil)で覆った、見るからに不審な怪僧が一人。しかし、この者こそは、二人が会合を予定していた、津島三河守長政である。数年前に「人喰い族」を調査していた、あの司書学芸員だ。

塔樹無敎「あなたが、聖さんと先生の言っていた、津島三河ですね?」

津島長政「然り」

本行寺道理「で、当職にどんな戦場を用意してくれるんだ? 無論、報酬もな」

津島長政「伊豆まで来て貰う」

塔樹無敎「伊豆高原に、ですか?」

津島長政「伊豆には現在、反射炉の史跡より開発せし新兵器『反射砲』が在る」

塔樹無敎「は…反射砲?」

本行寺道理「電機は使えないはずでは?」

津島長政「反射砲の源は、陽光だ。陽光を以て、陽光を撃つ…其(それ)が何を意味するか、理解出来ぬ汝等ではあるまい?」

本行寺道理「太陽の光と熱を反射炉で増幅させ、そのエネルギーをレーザー砲として発射する…要は、ソーラーだけで完結する兵器というわけか」

塔樹無敎「それなら、例え電力を確保できなくても、太陽光さえあれば、つまり天候が晴れていれば、それだけでレーザー攻撃ができるという事だ!」

本行寺道理「その反射砲とやらを掌握した者が、この戦争の勝者に成る…そういう策だな?」

津島長政「如何にも、理解が早く感心する」

塔樹無敎「しかし、どうして私達が必要なのですか?」

津島長政「敵も、我等の策に勘付いた故、反射砲を事前に破壊せんと試みている。殊に、伊豆に接する沼津・狩野川では、陸海空の戦端が開かれんとしている」

本行寺道理「話は分かった! 当職を伊豆に、沼津へと連れて行け! 殺しには慣れたが、血が騒ぐのは久しい。存分に狩らせてもらうぞ!」

塔樹無敎「反射砲を確保すれば、敵を一網打尽にできるだけでなく、攻撃を躊躇させる抑止力にもなる。私達の手で、この戦争を終わらせる事ができる…了解致しました。三河守護の御依頼、喜んで引き受けます!」

津島長政「若人(わこうど)は淳心にして、解(わか)り易し…汝等の力が、平和への礎(いしずえ)と成らん事を希(こいねが)う。なれば、予に続け。敵は、狩野川口に在り!」