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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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これも音楽のマジックなのか。びっくりされるかな、嫌がられるかも、と想像するよりも前に、郁の指が同じように自分の手を握り返してくる。

「……」

郁の手にぎゅうっと力がこもって、瑞は彼女の表情を見たくなった。が、同時に見られなくなる。だって。

(そうか…)

わかってしまったのだ。

(一之瀬の好きなやつって、俺なんだ…)

あんなにあんなにモヤモヤして、一体どこの誰だろうってずーっと頭を悩ませていたのが嘘のように、その確信はすとんと瑞の中に落ちてきた。
彼女の指先に触れただけで、わかってしまった。透き通るような歌声の中で、瑞は胸が締め付けられるような感覚に陥る。これまで彼女と一緒に見たもの、話したこと、そのことが思い出されてくる。
好きな相手を想って泣いていた彼女に、そんなやつなら好きになるのをやめればいいのに、と言ったことがある。しかし彼女は、そのひとしかあたし無理、と返してきた。それが自分のことだったなんて。

(俺は一之瀬の一番近くにいるのに。ずっといたのに)

鈍いとか、そういうことを抜きにしても自分を今日ほど愚かだと思ったことはない。どんな気持ちで、郁は瑞のそばにいたのだろう。いつも笑って、気づかせないように気を配って、平気な振りをして。

大歓声の中、ライブが終わる。拍手をするのに自然と手が離れたとき、なんだか心細いような気持ちになったのは瑞の錯覚かもしれない。





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