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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 距離 二話

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美幸と会うだけでも美那子は嫉妬するだろう。今はまだお互いに離れようとする気持ちにはなれないのだ。
ひょっとしておれのことを試しているのかも知れないと秀一郎は考えた。
美幸には会わないと言ってくれると思っているのかも知れない。いや、絶対にそうだ。

「お兄ちゃん、美幸さんとの約束破らないでね。私が嫌われるから」

「いいのか?」

「当たり前じゃないの。何言っているの」

「うん、それならいいんだけど。美幸さんと会うけど付き合うって決めたわけじゃないよ。今のおれは美那子以外に好きになんかなれないって思うから」

「妹として大好きでいてくれたらいいの。そうすればずっとずっとお互いに結婚しても、お婆ちゃんお爺ちゃんになっても私の大好きなお兄ちゃんでいられる。それが本当の気持ちなの」

「美那子・・・」

美那子は大人になってしまったという事なのだろうか。秀一郎は悩んだ。どんなに好きになっても身体を求めあう事もなく一緒に暮らすこともなく子供を作ることもない男女の関係など永遠ではない。そのことを妹は悟ったのだろうか。

「美那子はこの先お互いにどんなことがあろうとも一番大切にしたいと思っている。それは忘れないで欲しい」

「うん、ありがとう。美幸さんはお兄ちゃんに惚れているから、念願の初体験が出来ると思うわ。羨ましいなあ~美那子にどうだったか教えてね」

「何を言うんだ、バカなことを。するわけないだろう、そんなこと」

「お兄ちゃん、私とは出来ないのよ。美那子だって初体験の相手は違う人よ。気にすることないって私のことなんか」

美那子の言葉は本心ではないだろう。
家に着いたら自分の部屋にこもって出てこなくなっていた。
母親の美樹が秀一郎に尋ねる。

「楽しく時間を過ごしてきたと思っていたのに、どうしたの?喧嘩でもしたの?」

「いや、喧嘩なんかしないよ」

「だったら何で美那子は部屋にすぐに入ったのかしら?」

「わからないよ。なんかやりたいことがあるんじゃないのか」

「あなたも本当にウソが下手ね。そんなことじゃ女性とお付き合いするときは十分気をつけないとダメよ」

「母さん!言い過ぎだよ。美那子は自分からおれに美幸さんと付き合いなさいと言ってくれたんだよ。おれが怒らせたんじゃないんだから」

「そうだったの、美那子が自分で言ったのね。なるほど、解ったわ」

「何が解ったんだよ?」

秀一郎は母親の解ったわという意味が理解できなかった。