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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 距離 二話

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秀一郎は嫌々ながら美那子と一緒に美幸に会いに出掛けた。

「久しぶりね、元気にしていた?」

美幸は秀一郎にそう声を掛けた。

「ああ、元気だよ」

美那子は美幸が刺激的な服装で来たことをちょっと怪訝に感じた。

「美幸さん、今日は素敵な服装ですね」

「あら、そう。ありがとう。秀一郎さんが来るから頑張っちゃったの」

「ええ?そうなんですか~」

「あなただって好きな人に会う時は頑張っちゃうでしょう?違う?」

「そういう事が無いからわかりませんが、そうかも知れないです」

「そういう事が無い?それは寂しいね。あなたほどの美人なら縁がないとは思えないからひょっとして心に思っている人がいるんじゃないの?」

美那子は美幸が気付いていることを解っていても否定した。

「好きになれる人が現れないだけです」

「秀一郎さんも同じっていう事なのかな?彼女いないって聞いたけど」

美幸はニヤッと笑った。

「バイトと勉強が忙しいから恋愛を今はしようとは思わないよ」

「そんなウソ言って、もう。美那子ちゃんといい私から見たら羨ましいほどの美男美女なのに勿体ないって思う」

「勿体ないって、だから恋愛するというのも変だよ。好きな人が出来たら自然と恋愛したいって思うよ」

「じゃあ、秀一郎さんが私を好きになるように頑張る」

「ええ?美幸さんが?」

「解っていてそういう事言うの?言っちゃうわよ、もう」

なんだか兄がマズくなってきたという事を悟った美那子は笑いながら、

「お兄ちゃん、美幸さん素敵な人じゃない。デートしたら?」

もう断ると何を言い出すかわからないと考えた秀一郎は、一旦この場からこの話題をやめたいと思い、美那子のいう事に従った。
美幸と別れて家に帰る途中美那子はずっと黙っていた。秀一郎にはそのことが痛いほど解っていた。

美幸には約束通りに会う。しかし、先には進まない。今一緒に手を繋いで歩いている美那子が自分の一番好きな女なんだと、自分の気持ちはそれ以上でもそれ以下でもない。
兄妹であることが何故いけないんだ?愛し合う二人に何の束縛があるというのだろう?