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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トラブルシューター夏凛(♂)1 堕天使の肖像

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 夏凛は普段から色々な香を身に纏っている。その香は時と場合によって使い分けられる。香の効果は周りの人たちの興奮を押える香や眠らせる香、そして、自白させる香など多種にわたる。だが香の匂いは全て薔薇の香の為一般人にはその違いがわからないだろう。
 今使っている香は嗅いだ者に起きたまま夢を魅させるという幻覚作用を起こさせる香だ。先ほど受付嬢に使った時は手から少量の香を出したが、今は全身からその香を出している。
 社長室と書かれたプレートの下に立つと夏凛はドアを勢いよく両手で開けた。それと同時に社長室の中に薔薇の香が一気に流れ込む。しかし、社長室にいた者たちは誰一人幻覚に堕ちることはなかった。
 部屋の中にはマモンカンパニーの社長である小さな男の子が椅子に座り、その右脇には秘書と思われる女性が一人立っていた。
 マモンカンパニーの社長の名はゲイツ、若干九歳という若さである。年齢は九歳と言っても、この国で一番入ることが困難とされ、変人の集まる大学として有名な帝都大学を七歳の時に首席で卒業したという人間離れした経歴の持ち主で、神童と言われていた大天才である。
 大学を卒業して直ぐにマモンカンパニーの親会社である『パンデモニウム』にヘッドハンティングされて、社長の座に付き、数多くの偉業を成し遂げている。
 彼はTVなどのメディアなどにも顔を出すことがしばしばあり、帝都でもその顔は有名だ。
 社長室は殺風景だった。デスク以外の家具は何もなかった。しかし、本当に何もないわけではない。部屋の各所には溝のようなものがあることが見て取れる。家具などは全て収納できるようになっているのだ。
 ゲイツは指を組んで肘をデスクに付いた。
「遅かったじゃないか夏凛くん」
「あのへっぽこマシーンに私を襲わせたのは君なんだろぉ〜?」
 夏凛は昨晩自分を襲ったマシーンがマモンカンパニーの差し金だということを確信していた。
「まぁね」
 ゲイツはせせら笑った。この少年は全てを見越していたようだ。夏凛にはそれが気に食わなかった。
「あんなへっぽこマシーンを送りつけるなんて心外もいいところだね。それに私がここに来ることわかってたみたいじゃないか」
「夏凛くんがここに来るかどうかまではわからなかったけどね。絵画を探す以来を受けたのは僕が調べさせたところ三人、一人は第1ステージのマシーン殺されちゃったよ。残る二人のうちどちらかがここに来るんじゃないかなあ、と思ってただけさ。そんなとこ」
「第一ステージねぇ。だからあんなに弱い刺客を送って来たわけ?」
「これはゲームなんだから、最初っから強い敵が出てきたらゲームバランスが悪くなっちゃうだろ」
「じゃあこれはファイナルステージってところなの?」
 ゲイツ少年はまたせせら笑った。
「残念でした。先はまだまだ長いよ」
「!?」
 世界が揺れた。夏凛は身体のバランスが崩してしまったのだ。そして、彼はそのまま突然床に大きな口を開いた暗い穴の中に落ちてしまった。
 床に開いた闇に通じる穴はゆっくり閉じられた――。
「社長そろそろ、お約束の時間が――」
 秘書の言葉にゲイツはゆっくりと立ち上がり、社長室を後にして行った。
 社長室のドアが閉まる寸前ゲイツは小さな声でこう呟いた。
「生きてまたここに来られたら、その時が……」