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第七章 星影の境界線で

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 その様子を呆然と見つめるルイフォンの腕を、リュイセンが引き寄せる。
「ルイフォン、今なら外に出られる」
「け、けど、こいつは〈七つの大罪〉の〈悪魔〉なんだ」
「何……?」
 リュイセンは黄金比の美貌を曇らせた。厄介な奴に会ったと思うと同時に、気配を感じられなかったのも、得体の知れない輩なら道理かと、妙な納得をする。
 たが、彼にとって〈七つの大罪〉は警戒すべき相手ではあるが、積極的に関わる相手ではなかった。彼はホンシュアを一瞥すると、低い声で言った。
「気になるのは分かる。だが、今、俺たちがすべきことはなんだ?」
 リュイセンの視線が、ルイフォンの背中を示す。
「……」
 ルイフォンは肩越しに、背負っているコウレンの横顔を見た。ぐったりとして眠っているが、確かな息遣いが首筋に掛かる。
「……お前の言う通りだ。リュイセン、行こう」
 コウレンを背負う手に力を込める。
 踵(きびす)を返したルイフォンたちに、ファンルゥの悲鳴のような声が上がった。
「待ってよ! ホンシュアは、お友達じゃないの!?」
 悲壮ともいえる必死な顔で、大きな目が彼らを責め立てていた。
「ホンシュア、『逢いたい』って、泣いてた!」
「逢いたい……?」
 ルイフォンが思わず足を止める。それを見て、リュイセンが忌々しげに眉を上げた。
「ファンルゥが呼んでくる、って言ったけど、来てくれないだろう、って。だから、ホンシュアは熱があるのに、無理して地下からここまで来たの!」
「ルイフォン、行くぞ!」
 ファンルゥの言葉にかぶるように、リュイセンが叫ぶ。
 そのときだった。
 うつむいていたホンシュアが顔を上げた。
 青白い頬に、熱に浮かされたような、潤んだ瞳。化粧っ気のない顔は写真のホンシュアとは、だいぶ印象が違ったが、気をつけて見れば確かに本人だった。
「あっ……」
 ホンシュアの目が、ルイフォンとリュイセンを捕らえた。中途半端に口を開けたまま、彼女は動きを止める。
 その顔は徐々に歓喜に満ちあふれ、やがて瞳から、ひと筋の涙が流れ落ちた。
「……逢えた…………本当に……」
 荒い息と共に、彼女の口から呟きが漏れた。


作品名:第七章 星影の境界線で 作家名:NaN