小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

②冷酷な夕焼けに溶かされて

INDEX|2ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

私とララは急いでペーシュを連れて私室へ戻る。

二人で花を生けていると、ミシェル様がリビングへ入って来た。

「おかえりなさいませ。」

膝をついて頭を下げる私を、ミシェル様は無言で見下ろす。

「…。」

顔を見上げると、戸惑ったような表情でぷいっと逸らされた。

「あとはいい。夕刻まで下がれ。」

ミシェル様に斜めに見下ろされたララが、微かに身を震わせる。

「は…はい!それでは、失礼致します。」

深々と頭を下げ、風のように私室から出て行った。

(…。)

ミシェル様は、警戒心の強い方だ。

(侍女や奴隷すら傍におかないのに、なぜ私は傍に置くのだろう。)

(別の部屋に幽閉するのが普通だと思うけど…。)

「何か、飲まれますか?」

「…私の世話は不要だ。」

冷ややかにはねのけられ、私は少し頬をふくらませた。

「やることがないのです。何かさせて頂かないと、落ち着きません。」

抗議すると、ミシェル様が微かに目を見開く。

「…好きにしろ。」

マントを外しながら言われた言葉に、私は反抗するかのように言い返した。

「では、お世話を焼かせて頂きます!」

そして、外されたマントを奪うように取り、丁寧にたたむとミシェル様が呆れたような表情で私を見下ろす。

「それが『好きなこと』なのか?」

私はマントを衣装箱にしまおうと、ミシェル様に背を向けた。

「主のお世話をさせて頂くことは、後宮の女の喜びですから。」

衣装箱の蓋を閉めた瞬間、髪の毛をグッと掴まれる。

「では、どんな世話でもするんだな?」

言いながら、私の首筋の痣を指でなぞった。

「…ミシェル様が…望まれるなら…。」

後ろから髪を引っ張られ、仰ぐようにミシェル様を見上げて答えると、端正な顔が近づいてくる。

(…口づけ!?)

私は慌ててミシェルさまの胸を押しやった。

「ま…まずは昼食を召し上がりませんか?」

さりげなく言ったつもりだけれど、ミシェル様がふっと笑みをこぼす。

「主が望んだどんなことでもするのだろう?」

「まだ…日が高いですから!」

「おまえは、鍛練を日暮れにするのか?」

「…え?」

(鍛練?)

きょとんとした私を見て、ミシェル様がぷっとふきだした。

「ははは!」

(からかわれた!)

私が頬を膨らませたところで、昼食が運び込まれる。

「おまえは、そんな女じゃないだろう?」

ミシェル様はテーブルにつきながら、私を見た。

「男に尽くすしか能がない女じゃないはずだ。」

言いながら、テーブルに生けていた花を一輪手に取り、私の耳に差す。

「あとで、ヘリオスの実力を見せてくれ。」

薄く微笑んだミシェル様が何を考えているのかわからず、私は黙って頷くのが精一杯だった。