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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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「ここでおかしなことが続いてるっていうんで、見に来たんです。おじーちゃんは?」
「わしは見回りだ。近所に住んどる。変な事件が続いているからな」
「変質者の仕業、ではないですよね?」

颯馬の言葉に、老人は一瞬答えに詰まったのち、頷いた。

「人間の仕業であるものか。わしは、妖怪変化やらの仕業だと思っとるよ」

話を聞かせてください、と颯馬が穏やかに尋ねる。老人はぽつぽつと語り始めた。

「この坂には、魔が封じられとる」

魔。瑞は、ぞくぞくと背筋に悪寒が走るのを感じた。幽霊とは違う。自分にはなじみのない、得体のしれないものである。

「明治を生きたわしの祖父がよく話してくれた。この坂を夜歩いていると、風の鳴る音に混じって、囁くような不気味な声が聴こえてきたそうだ。それは魔物の声で、坂の下から這い出てきては人間を喰らうんだと。明治よりもっと昔から、ここはよくない場所だったんだ」

物騒ですねえ、と颯馬が相槌を打つ。魔物に喰われる、というのはちょっと想像できない怪奇だった。

「祖父が子どもの頃、町の神職が総出でここを清め、魔を封じた」

その神職に、颯馬の先祖も含まれていたという。沓薙山は、町では一番力を持つとされる神を祀っており、それはいまも変わらない。

「明治の暗がりは、文明の進化とともに消え失せた。今はどこも明るく安全だ。だから現代人には、暗闇を怖がるということが殆どない。町の夜は、外灯や店の電気でいつまでも明るく、手には誰かとすぐに繋がれる電話を持ってる。だから、まじないとか、呪いとか、そういうものを信じないし、意識しないし、効果もない。夜を恐れることがない」

だけど、暗闇はこんな身近に存在している。科学が発達してもなお、ひっそりと息づく闇の住人達。

「こんなことをおじーちゃんに言うのはアレなんだけど、この坂は、町中のイヤ~なものの吹き溜まりみたいなものになってるね」

颯馬が言うと、老人は頷いた。