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案内して

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「あなた…道に迷ってる?」

 黄昏て、薄暗い安威山。

 生い茂った木々から散った葉や雑草に覆われ、半ば消えかけた獣道。

 立ち尽くしていた背中に、私は声を掛けた。

 振り返った顔は、好みのタイプ。

 ニヤけかける顔を、引き締める。

「麓に行きたい?」

 うなずく眼鏡男子。

 すかさず、腕を伸ばし手を繋ぐ。

「案内してあげる」

 手を引かれて、男の子も歩き始める。

「私、こまや。あなたは?」

「て、哲弥」

「ひとりで来たの?」

「いや、叔父達と」

「何でそんな軽装で、山歩きなんかするかな」

「ハイキングコースを歩くだけって、事だったので…」

 殊更仰々しく、私は言った。

「そんな服装で夜明かししたら、冬じゃなくても凍え死んじゃうだからね。」

「─」

「だから私は…命の恩人って事♡」

作品名:案内して 作家名:紀之介