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食べるしかない

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「最初はグー」

 教室に、一子さんが声を響かせました。

「じゃんけん、ぽん!」

 2人の前に、3つ目の手が差し出されます。

「え?」

 驚いて顔を上げた佳奈さんに、新たな手の持ち主は尋ねました。

「で、勝利者には、どんな栄冠が もたらされるの?」

「き、桔葉さん!?」

「机の上のお菓子を…3つ食べる権利?」

 伸びた桔葉さんの手の甲を、一子さんが叩きます。

「1個だけ!」

「…ケチくさいわねぇ」

 躊躇なく お菓子を1つを手に取り、頬張る桔葉さん。

 咀嚼されたタイミングを狙って、一子さんは手を差し出しました。

「500円、頂きます」

「へ…?!」

「物凄く美味しかったでしょ? お・か・し」

 一子さんが、桔葉さんに迫ります。

「私達が割り勘で買った、と・く・べ・つ・な お取り寄せ なんだからね!」

「─」

「まさか、食い逃げするつもり?」

「わ、判ったわよ!」

 ポケットから財布を出しながら、桔葉さんはボヤきました。

「どうして私は…こんな所で、お金なんか払う羽目に なってる訳?」

「これに懲りたら、通りすがりのじゃんけんには、迂闊に混ざらない事だね」

「肝に銘じるわ。。。」
作品名:食べるしかない 作家名:紀之介