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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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旧説帝都エデン

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魔女っ娘マナ


 時雨[シグレ]――その名は帝都に広く知れ渡っている。
 年齢不詳、出身地不明、経歴不明、彼の過去に関すること――全て不明。しかし、この街ではよくあることなのでさして不思議なことでもないし気に止めることでもない。
 見た目は中性的な美しさに満ち溢れていて、妖艶さを身に纏っている。帝都一の美しさを持つと言われる彼は人々から『帝都の天使』と呼ばれている。
 今、彼はこの街で小さな雑貨店を経営している。客はたくさん来るが殆どが?時雨?目当てで売り上げはあまりいいとは言えない。時雨目当ての客がちゃんと買い物をしてくれるならば売り上げは上がるだろう、だが時雨を見に来る客が買い物をするとは限らない、つまり時雨の美しさと売り上げはあまり関係がないらしい。だが、店の売り上げが上がらないのは品揃えの奇妙さの為だと言う者も多くいるのだが、時雨自身はそれを断固否定している。
 帝都の観光プログラムの中には『時雨を見に行こうツアー』というものもあり、普通ならば売り上げが上がると皆は想像するに違いない……がしかし、やはりこちらも時雨を?見る?ということがメインらしく、店の前にバスは止まるし、カメラのシャッターの嵐が起きるわで、買い物客に取っては迷惑極まりないのが実状らしい。
 だが、実は時雨はちゃっかり観光会社からお金をプールして貰っているらしい。しかし、それでも時雨の店は毎月赤字を記録してしまってる。店が赤字になるのは時雨の趣味で無意味に不必要で売れない物を大量仕入れをするからだという声があるが、時雨はそれも断固否定してる。
 そこで彼は店の経営者として仕方なく店の赤字を補うため、ある副業をすることにしたのだった。

 この街では毎日のように凶悪犯罪が数多く起こっていて、その件数は年々増加傾向にある。そのため帝都警察だけでは年々手に負えなくなっていた。
 そこで帝都はある政策を打ち出した。その政策とは凶悪犯罪者に懸賞金を賭けることであった。そしてこの街に?ハンター?が生まれた。
 当初のハンターは帝都政府の依頼だけを受けていたが、今では一般の依頼も請け負うようになり、ハンターの仕事は日に日に広範囲に及ぶようになっていた。
 凶悪犯罪者の処理から、遺跡調査、モノ探し、妖物退治まで報酬しだいでどんな仕事もこなすスペシャリストとなった彼らたちはハンターではなく?トラブルシューター?[問題処理屋]と徐々に呼ばれるようになっていった。
 時雨の名はトラブルシューターになりその知名度を増すことをなった。しかし、彼はトラブルシューターの仕事のことをあまり好きではないらしいのだが……雑貨店の運営をしていくためには仕方ないらしい。
 たしかに一流のトラブルシューターは儲かる。事実、時雨は本業の雑貨店より副業のはずのトラブルシューターの方が数十倍お金になっているらしい。

「はぁ……今月も赤字……でも総合的には超黒字……こんなことでいいのかなぁ〜?」
 時雨はこたつに入りながら店の帳簿とにらめっこをしていた。
「はぁ、ボクは雑貨屋一本でいきたいのに……」
 雑貨店?ZIZZ?日用品から非日用品まで豊富な品揃えを売りにしている店である。帝都のパンフレットにも『美男子の店長のいる店』として載っている有名店なのだがZIZZに来店する客の殆どは時雨見たさで来ていて、買い物をしていく者は少ない。つまり売上の方はさっぱりであった。
「あ〜〜〜〜〜っ!!」
 時雨の声が店の外まで響き渡る。ZIZZに訪れていた客が何事かと静まり返った。
 ドドドドドッ! バンッ! 時雨のいる部屋へ何者かが慌てたようすでふすまを開け駆け込んできた。
「テ、テンチョどうしたんですかぁ〜!?」
 部屋のふすまを開けたのはツインテールにメガネにメイド服……の可愛らしい女の子であった。歳は10代後半から20代前半らしいのだが、顔立ちのせいか、どう見ても中学生くらいにしか見えない。
 入って来た女の子は、膝に手を付き肩で息を切らしている。
「ど、どうしたんですぅ、大声なんて出して?」
「あぁ、ごめんごめん、今月も赤字でさぁ、つい大声だしちゃった」
 『えへっ』と時雨は小悪魔のような笑顔を見せた。
「犯罪ですよ、その笑顔は」
 時雨の得意技の笑顔は誰をも魅了し、何でもいうことを聞かせてしまう反則技であった。だがこの娘[コ]にはさして効果が見られない。
「はぁ、どうしたら黒字になるんだろうね」
 帝都の天使はまるで自分のいた世界を見つめるかのように空を見上げた。
「テンチョのグッズ販売するとか?」
「ヤダ!」
 即答だった。
「どうしてですかぁ〜」
「とにかく、それはイヤなの。ねぇ、別の方法はないの?」
 メイド服の店員は腕を組んで首を傾け『う〜ん』といった表情で少し考えた後、ポンと手を叩いた。
「そうだ! 通信販売を始めたらどうですかぁ」
「あぁ、それはいいかも」
 時雨もメイド服の店員の意見に対して好感触といった感じだ。
「でしょぉー」
 メイド服の女の子は誇らしげな表情を見せた。
「ありがとう、ハルナちゃん」
「エヘッ」
 ハルナはかわいらしく微笑んだ。
「ところで、ハルナちゃんお店の方は?」
「えっ!?」
「今、ハルナちゃんしか店員いないでしょ?」
「あぁぁぁぁ〜〜〜〜っっ!! ごめんなさい、すぐに戻りますぅ!」
 ハルナは慌てて店に走って行った。
「……はぁ、若いってすばらしいなぁ」
 時雨はお茶をすすりながら深く息をついた。その姿からは若いという言葉は微塵も感じられなかった。
 ドン! ゴロゴロ! バタン! 階段の方から大きな音が聞こえた。そして――。
「いった〜い」
 という声が聞こえてきた。
「……はぁ、元気だねぇ」
 時雨はお茶をすすりながら深く息をついた。やはりその姿からは若いという言葉は微塵も感じられなかった。

 時雨は太陽が一番高い位置に昇ったころ、店の裏にある庭に出て、剣術の特訓をしていた。時雨が剣を振るその姿はまるで舞を舞っているかのように優雅さを極めていた。
 庭は高い壁に囲まれ外からの一切の干渉を遮断している。はずだったのだが、時としてそうもいかない場合があるらしい。
 時雨が剣術の特訓をし始めて10分くらい経ったころ、時雨の目の前である異変が起きた。突如、空間が湾曲しはじめたのだ。
 空間は時雨の目の前でその形を渦巻き状に歪め、徐々に渦の中心に吸い込まれていき、最終的には半径1メートルの穴がぽっかりと宙に浮かんだ。
「ただいまー!」
と、宙にぽっかりと口を開けた穴から女の声が聞えたと思ったら、その中から金髪の巻き髪を揺らしながら派手な格好をした女性が這い出て来た。この格好は一見法衣にも見えないこともないが、それにしても派手だった。
「時雨ちゃん、ただいまー!」
 穴から出てきた女性は時雨を見ると『よぉ!』といった感じであいさつをした。
「やぁ、突然のお帰りだねぇ、マナ」
 時雨はマナに微笑みかけた。しかし、マナは不機嫌な顔をしていた。
「いつも言ってるでしょ、マナじゃなくて、マナ様って呼びなさいって」
 『ハイハイ』と時雨は思ったがここはおとなしく従がっておいた。そして時雨はちょっとわざとらしく言った。