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Journeyman Part-1

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「しかたがないわ、ビルもあなたもフットボールのこととなればほかの事は全部どこかへ吹っ飛んでしまうんですもの、でも、私も日本は楽しみなの、アメリカにずっといたんじゃ出来ない経験ができそうで……キモノも着られるしね」
(ジム……どうやらニシジンオリとやらは1万ドルは下らないらしいですよ)
 ビルがジムにそう耳打ちするとキャロルがわざとらしく咳払いして笑った。
「コーヒーはここに置くわね、私はキッチンに行かなきゃ、ジム、夕食は食べていけるんでしょう?」
「それは嬉しいね、こころのところ外食ばかりだったからね」
「任せておいて……じゃ、どうせサンダースのお話なんでしょうから私は外すわね、用があったら声をかけて、大抵はキッチンにいると思うから」
 キャロルはそう言ってリビングを後にした。
 その足取りが軽いことに二人の男は胸をなでおろしたが、ジムは大事な話があってやってきたのだ。
「まずはオフェンスコーディネーターとディフェンスコーディネーターですね」
「ああ……君は誰が適任だと思う?」
「あなたは?」
「いや、君の方が今現在のNFL事情には詳しいだろう?」
「ならば候補を挙げましょう、決定権はあなたにあることに変わりはありませんがね」

 その後、10日ほどかけて候補を挙げては打診したが、色よい返事は貰えなかった。
 選手の移動と違ってコーチの移動は自由な上、来季の指針が決まらなければFAやドラフトでの補強方針も決まらない、レギュラーシーズンが終わりプレイオフが始まる頃には、プレイオフを逃したチームの人事が始まり、スーパーボウルが終わる頃にはほぼ固まっているのだ、そして、プレイオフに出場したチームではコーチの移動はあまりない、チームが上手く行っているのに代える必要は無いからだ。

「困ったな……こうなったら……」
「ええ、コーディネーター経験者から探すのは諦めるほかないでしょう、新チームに新コーディネーターでは不安が残りますが、ある意味フレッシュな方が良いかも知れませんね」
「スティーブ・ジャクソンはどうだ?」
「マイアミのオフェンスラインコーチですね?」
「どう思う?」
「私も彼の名を挙げようかと思っていました、オフェンスの基礎はまずラインですからね、クォーターバックにはリック・カーペンターを予定しているんでしょう?」
「ああ、コーディネーターが決まればすぐにでも連絡を取るつもりだ」
「彼が入ってくれるならプレーコールはオーディブルで補ってくれるでしょう、それを繰り返して行く内にジャクソンも成長してくれそうだ、良いと思います」
「ディフェンスは?」
「それは私に心当たりがあります、昨シーズン限りで引退した、ランダーズのミドルラインバッカー、ハミルトンでは?」
「コーチ経験がないのは若干不安だが、フィールド内のコーディネーターだったようなものだからな、能力は充分だろう」
「では、その線で打診してみましょう」

 ポジション別のコーチからコーディネーターに昇格を断るならば、よほどの理由があるのだと考えてもあながち間違いではない。
 二人とも二つ返事、こうして新生サンダース・コーチ陣の骨格も定まった。

作品名:Journeyman Part-1 作家名:ST